丸石産業(株)は、研磨パッドを簡単に貼り剥がしできる「Q―Chuck(キューチャック)」や「Amelia(アメリア)シート」といった独自製品を開発・展開し、精密研磨パッド市場で確かな地歩を築いてきた。2022年に迎える創立50期に向けて、「創造」をキーワードに新たな市場の開拓に挑んでいる。同社の取り組みを代表取締役社長の石野達也氏に聞いた。
―― (1)OA機器部門と(2)精密研磨パッド部門の2事業を展開しています。
石野 年によって若干の変動はあるが、売上構成比はおおよそ半々だ。(1)ではプリンターや複写機の機能部品を手がけているが、成熟市場であることに加え、新型コロナに伴う在宅勤務の普及でプリント需要が激減した。回復の途上にあるが、今後も大きくは伸びないとみており、半導体市場の拡大で成長余地が大きい(2)で新規市場の開拓を図っている。
―― まず(1)の状況は。
石野 前述のとおり新型コロナの影響を大きく受けて、前期(21年5月期)は約2割の減収となった。直近では、トナーの低融点化や微粒子化に対応する次世代品の開発に全力を挙げている。温暖化対策として、OA機器には再生やリユースといった環境性能の向上が求められており、顧客と共同でこれらを実現していく。限られたパイの中で成長するためには、時代に即した戦略が必要と考えている。
―― (2)については。
石野 新型コロナの影響を受けたものの、昨年下期から通常レベルに戻り、前期は20年5月期並みの業績を確保できた。今期(22年5月期)は今のところ8%増で推移しているが、全然満足していない。まだまだ伸ばせる余地があるとみて、CMP分野での地位を守りつつ、新製品を投入して新たな市場を開拓していくつもりだ。
―― 先ごろ新製品としてAmeliaシートを投入しましたね。
石野 Ameliaシートは、研磨・CMP装置の定盤・プラテンに貼り付けると、裏面粘着テープ仕様のパッドを簡単に貼り剥がすことができる製品だ。Q-Chuckと市場や顧客が重複する可能性はあるが、ユーザーインの発想で考え、新たな価値を生み出せると判断して製品化に踏み切った。すでに多くの引き合いをいただいており、順調な立ち上がりを見せている。
―― 新たな製品の開発状況は。
石野 現状で(2)のセグメント別構成は、光学フィルターが32%、シリコンが16%、液晶が10%、マスクが8%などとなっているが、化合物半導体ウエハーや電子部品向けは3%程度にとどまっており、ここを新製品で開拓していきたい。データセンターや5Gアンテナといった成長分野で研磨アプリケーションが増えるとみており、ここを将来、(2)をさらに大きくする幹として育成していくつもりだ。
―― 具体的には。
石野 SiCやGaNといったパワーIC用ウエハーの研磨に加え、セラミック素材やパッケージ関連で開発・評価を進めている。一部で秘密保持契約を締結して開発中の案件もある。金属定盤の代替製品である「D-Lapper(ディーラッパー)」などの既存製品に改良を加えて性能を付加するケースもあれば、全く新しい製品を開発提案するケースもある。
一例として、車載関連部材の製造工程用消耗材として、研磨パッド以外の機能性フィルムも有力候補として開発中だ。
―― 中期経営計画「CR-50」を推進中ですね。
石野 50期末の23年5月期までを対象としており、CreateとRebornの頭文字から名付けた。売上高営業利益率10%以上の再達成と持続的成長を目指している。研磨プロセスに関わるところや、パッドに付随するビジネスに注力し、(2)の売上高を飛躍的に拡大したい。
―― 今後の抱負を。
石野 ここ数年は人材の強化に努め、人事面でも若返りを図った。営業体制の強化は一段落したが、今後は開発体制を強化したい。先ごろ横浜工場(横浜市都筑区)で増員したが、まだ採用を増やすつもりだ。
生産体制の強化も計画中だ。詳細はまだ言えないが、投資の時期を含めて慎重に検討を進めていく。加えて、重要なビジネスパートナーとの協業も強化している。大きな目標感を共有し、新たな製品の開発を進めていくつもりだ。
新たな価値を創造し、この先50年も勝ち残っていける企業に生まれ変わる素地を作る重要な時期だ。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
(本紙2021年12月2日号10面 掲載)