電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第458回

「熱」の応用技術で次世代産業のパイオニアを目指していく


光洋サーモシステムは半導体、電子部品、FPDなどに展開

2021/11/19

 先の東京オリンピックが開かれた1964年の3年後、または大阪万国博覧会が行われた1970年より3年前の1967年7月19日にそのカンパニーは産声を上げた。その歴史は古く、1958年(昭和33年)に光洋精工(現ジェイテクト)の中にできたリンドバーグ事業部がルーツであった。バッチ型浸炭炉の国産第1号機を完成させて、その名を知られることになる。そのカンパニーの名前は光洋サーモシステムという。

 「この工業加熱装置は、今日にあっても自動車、建機、航空機の主要部品であるギア・ベアリング、セラミックやカーボンなどの非金属材料、二次電池材料や磁性材料として使用される粉体などの分野で活躍しています。この技術を横展開して、半導体製造装置、電子部品製造装置、そしてFPD(フラットパネルディスプレー)製造装置などの分野に採用されており、熱処理技術のエキスパートとして、今も創業以来のその道を歩んでいます」。

 こう語るのは、光洋サーモシステムにあって、代表取締役社長の任にある竹岡伸高氏である。同氏は、三重県松阪市出身、県立松阪高校を出て、名古屋工業大学で金属工学を学ぶ。卒論は、「ニオブ合金の熱間圧延」というものであった。卒業後は、当時の光洋精工に入社し、ひたすら熱処理技術の世界にのめり込んだのである。

 「2019年6月に社長に就任しました。現在の売り上げは160億円程度ですが、私は売り上げや利益率よりも、お客様満足度を評価しています。その満足度の結果が売り上げです。そして、何よりも大切なことは、一番初めに従業員が幸福になることだと思っています」(竹岡社長)。

光洋サーモシステムの研究開発棟
光洋サーモシステムの研究開発棟
 半導体製造装置分野では、最先端半導体デバイス熱処理工程のキープレーヤーになることをミッションとしている。製品群は多彩であり、300mmウエハー対応ラージバッチ縦型熱処理システム、低コスト・ミニバッチ縦型熱処理システム、量産用RTP装置などをラインアップしている。最近では、半導体レーザーの一種であるVCSEL向けのVF-3000シリーズが高いシェアを誇っているのだ。

 「ここに来て、当社が徹底的に注力しようと思っているのは、パワー半導体の分野です。シリコンおよびSiCなどの化合物を使ったパワー半導体は非常に将来性のある分野であると思っています。それだけに、力の入るところです」(竹岡社長)。

 半導体製造装置としては、酸化・拡散、LP-CVDシステム、ランプアニール装置、クリーンオーブンなどを取り揃えている。とりわけ「後工程なら光洋」という評価を頂けるよう、今後もひたすら注力するところであるという。

 電子部品製造装置としては、メッシュベルト式連続炉、セラミックコンベア式連続炉、高温イナートガスオーブンなどがラインアップされている。電子部品用の熱処理炉としては、約40年の歴史を持っているのだ。積層セラミックコンデンサー(MLCC)向けについては、滅法強いと言われている。特に脱脂用途のINHシリーズは、顧客の要望を取り入れながら、装置のモディファイを続け、国内トップクラスのシェアを誇っているという。

 FPD用クリーン加熱オーブンのCCBSシリーズは、昇華物が発生する処理工程において、圧倒的なシェアを誇っている。また、自動車関連でも二次電池や燃料電池製造を中心に、顧客の要望に対し柔軟な対応と、的確な装置提案を行い、採用実績を積み上げている。

 「本社工場内には48台のデモ機を置いて、皆さまにご使用いただいています。やはりライブでキャッチしていただくのが一番です。これまでも月に20件くらいのデモテストはあありましたが、最近になっては30~40件までアップしています。いかに電子デバイス周りのお客様が繁忙であるかということと、新規開発に熱心であることがよくわかります」(竹岡社長)。

 ところで、同社がここに来て重視しているのが「SDGs」である。同社は現在、ジェイテクトグループの1社となっているが、とりわけ次世代自動車については、環境にやさしいことがもはや絶対条件となっている。同社もまた、「環境企業として立つ」ことに大きくカーブを切ったのだ。その一環として、電力節約に大きく貢献するパワー半導体に注力することを決めてあるが、ここに集中することが世界的に見ても大きな社会貢献/環境貢献と考えているのだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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