電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第451回

エスタカヤ電子工業(株) 専務取締役 飛田厚氏


独立OSATに転換
イメセンなど開拓加速

2021/11/19

エスタカヤ電子工業(株) 専務取締役 飛田厚氏
 エスタカヤ電子工業(株)は、10月1日付で社名をシャープタカヤ電子工業(株)から変更した。これに先立つ2020年にシャープ(株)との資本関係を解消しており、独立したOSATとして再スタートを切った。長年のノウハウを持つイメージセンサーに加え、ミリ波レーダーやパワーデバイスなど新規開拓に注力して自律成長を目指す。専務取締役の飛田厚氏に話を聞いた。

―― 貴社の来歴と今回の独立の経緯について。
 飛田 当社は1979年にシャープの半導体事業の協力会社として、シャープと地元企業であるタカヤ(株)(岡山県井原市)の合弁会社として発足した。以来、シャープの福山工場(広島県福山市)で生産された半導体後工程をほぼ100%受託し、様々なデバイスのパッケージ組立、テスト、モジュール実装を手がけてきた。
 2007年にはベトナムにカメラモジュール工場を設立し、大手スマートフォン(スマホ)向けを受注して順調に規模を拡大した。しかし、スマホ市場の拡大とともに当社の規模ではベトナム工場への投資負担が重荷となり、18年にシャープが51%、当社が49%を出資する合弁体制に移行した。以後はシャープがマジョリティーを持っているが、同工場は両社で業務提携のうえ運営する。モジュール製造設備の開発、導入は引き続き当社が深くサポートしていきたい。
 一方、国内でのシャープからの受託事業は同社の半導体事業の縮小を受け、減少が進んだ。またシャープの新方針により、資本関係を解消したいとの申し入れがあり、20年3月にシャープ保有の当社株式を譲受した。シャープの商標使用期限もあったため、10月1日付で現社名に変更した。

―― 現在の事業概要と特徴を。
 飛田 足元の売上高は約250億円で、うち約200億円がベトナム工場向けのカメラモジュール製造設備だ。残る約50億円が半導体後工程関連である。後工程は長年の実績を持つイメージセンサーだけでなく、BGAやCOFなど様々なパッケージ、モジュール実装に対応できる。また、ウエハーテストやダイシングの受託にも柔軟に対応する。これだけ多彩な後工程メニューに対応可能な会社は、国内にはあまりないと自負している。

―― 新規領域の開拓に向けた取り組みは。
 飛田 カメラモジュールに関しては、世界トップレベルの技術を持つ。そのノウハウを活用し、イメージセンサーやミリ波レーダーをターゲットにしている。イメージセンサーは民生領域から医療用などのハイレベル領域向けパッケージを、開発から量産まで受託する。ミリ波レーダーは駐車場システムで量産実績があるほか、脈拍などのバイタルサイン検知、害獣検知、ヘリコプター搭載品などの開発も手がける。高度な検知、測距・測角ニーズに対応可能なレーダーの実現に貢献していく。
 これらに加え、新たにパワーデバイス分野にも進出する。これまで当社がOSATで手がけたことがない領域だが、今後見込まれる市場規模からラインアップとして持っておくべきという考えからだ。シリコンIGBTのファブレスモデル立ち上げを目指すJapan Power Device(株)と協業し、ダイシングとテストの受託から参画していく計画だ。ノウハウを蓄積してパッケージなどにカバーできる領域を拡大したい。

―― 生産能力増強に向けた方向性を。
 飛田 まずは既存設備の能力を最大限に活用することを目指すが、新規領域が拡大してきたら必要に応じて設備投資を検討する。当社はベトナム工場を立ち上げ、運用してきた実績もあり、海外展開も対応可能だ。国内、海外に限定せず需要に応じて新工場設立を考えていく。

―― 中長期的な事業目標を。
 飛田 当社は長年受託専業であったため、営業や調達機能が不十分だった。このためまずはその強化から始めている。また、製造に関しても長年蓄積した技術力を生かし、開発段階から参画できる体制構築を目指している。
 当社は長い受託製造の歴史で培ったノウハウを保有し、これまで他社では実現できなかったニーズにも対応できる可能性がある。また、国内生産のみならず海外展開でも顧客に貢献できると自負している。様々な可能性を模索し、事業拡大につなげたい。後工程事業として、10年後に売上高300億円を目指す。


(聞き手・副編集長 中村剛)
(本紙2021年11月18日号5面 掲載)

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