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第449回

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏


i線、KrFの出荷好調
生産能力を3割以上アップ

2021/11/5

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏
 キヤノン(株)の半導体露光装置事業が好調だ。半導体市場の拡大を受けて、i線、KrFを主力とする露光装置の販売台数は高い水準が続く。2022年も販売拡大が見込まれる中で、生産能力の増強にも着手している。インダストリアルグループを統括する武石洋明氏に、足元の状況ならびに来年に向けた施策を伺った。

―― 足元の受注・出荷状況から教えて下さい。
 武石 半導体市場の拡大に伴い、当社の露光装置事業も過去にないレベルで活況を呈している。今のところ、21年度(21年12月期)の半導体露光装置の販売台数見通し(21年度第3四半期決算発表時点)は142台(前年実績122台)を計画している。うち、i線は104台(同97台)、KrFは38台(同25台)を見込んでいる。

―― 光源別の状況は。
 武石 i線はセンサーやパワーデバイス、メモリー、電子部品関連など幅広い用途で需要が伸びており、KrFはメモリーやセンサーを中心に出荷が拡大している。また、KrFでは一部のロジック顧客でも採用が進んでおり、来期以降の業績寄与に期待しているところだ。また、地域別では中国向けの拡大が大きな牽引材料になっている。

―― 部材調達や物流面での不安材料は。
 武石 露光装置特有の特殊部材・パーツはサプライチェーンを追いやすいこともあり、ある程度めどが立っているが、むしろ汎用パーツの方がネックとなる可能性がある。例えば、電源製品などがそれに当てはまるが、どこかでサプライチェーンが寸断すれば、我々の装置生産にも影響が出る可能性があり、状況を注視している。また、物流面では新型コロナの影響で、中国の貨物便が停滞しており、出荷遅延などの事態にならないよう細心の注意を払っている。

―― 露光装置の今後の生産計画は。
 武石 年内はすでにフル生産で工場が埋まることが確実であり、年明け22年に関しても、ほぼ生産スロットが埋まっている状況だ。我々を含む装置メーカーの生産キャパシティーが逼迫していることから、顧客である半導体メーカーも従来に比べて装置発注のタイミングが早まっている印象だ。旺盛な需要に応えるために、露光装置の生産キャパももう一段引き上げるための投資を現在進めている。

―― 具体的には。
 武石 現状の生産キャパに対して、3割以上の能力アップを検討しており、主力拠点の宇都宮光学機器事業所のほか、生産子会社「キヤノンセミコンダクターエクィップメント」での生産フロア拡張や人員増強を進めている。

―― 製品展開は。
 武石 今年4月に、先端パッケージなどの後工程向け半導体露光装置の新製品として、52×68mmの広画角を実現した解像力1.5μmのi線ステッパー「FPA-5520iV LFオプション」の販売を開始した。16年に発売した「FPA-5520iV」の基本性能を継承しつつ、広い画角での回路パターンの露光を実現したことで、ヘテロジーニアスインテグレーションなどの幅広い先端パッケージのニーズに対応できる。後工程向けの装置出荷も大手半導体メーカーを中心に着実に伸びており、事業ポートフォリオの拡充に貢献している。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
(本紙2021年11月4日号1面 掲載)

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