商業施設新聞
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No.830

AM企業の意外な社会貢献活動


笹倉聖一

2021/11/2

 新型コロナの新規感染者数が減少するタイミングに合わせるように、アミューズメント(AM)企業が集客増に向けた新企画を打ち出している。今回、CAセガジョイポリスとバンダイナムコグループから発表会に招かれたので内容を紹介する。AM企業は、コロナ禍で客が離れ、これを取り戻すことに手一杯かと思っていたのだが、意外にも社会貢献にAM事業を取り入れ、自社ブランド浸透や事業拡大に乗り出している。

「FAR CRY VR : Dive Into Insanity」
「FAR CRY VR : Dive Into Insanity」
 CAセガジョイポリスは、10月16日から東京・台場の屋内型テーマパーク「東京ジョイポリス」で、ZERO LATENCY社とUBISOFT社が共同開発した「FAR CRY VR : Dive Into Insanity」を導入している。これは、フリーローム型VRシューティングアトラクションで、プレイヤーが能動的に動くことができる「フリーローム」と、他のプレイヤーと協力プレイが可能な「6人同時プレイ」を楽しむことができる。体験会に参加したところ、舞台は南国の楽園“ルークアイランド”。青い空ときらめく海に囲まれた美しい島で、バカンスを過ごしていると、海賊たちに捕らえられて獲物にされてしまった。島から脱出して生き残るために戦い抜いたものの、真の狂気を目の当たりにするという恐い展開。それ以上はネタバレを防ぐため、記事にしないように止められている。料金は2500円でちょっとお高めだが、愛好家は十分に楽しめるだろう。

 またCAセガジョイポリスはAMではなく、BtoG(行政)向けのVR製品事業の展開を8月に発表している。これは消防訓練や化学事故対応訓練で、リアルな現場の仮想体験を、行政側の隊員たちに提供できる点で興味深い。VR技術は、娯楽として楽しむのも結構だが、危険な仕事環境での隊員の訓練に役立ってこそ、社会的存在意義が高まるのではないかと感心した。これは、韓国のスコネック社と業務協力を締結したことで実現し、日本での発売日の決定や、日本の消防法への変更などのローカライズは今後行う見込み。CAセガジョイポリスは、BtoG(行政)向けの「消防訓練」「化学事故対応訓練」用のVR製品の販売を新規事業として展開する。火災現場では、熱感を感じられるセンサーを採用し、現実の火災現場と同様の状況で訓練できる。化学事故対応訓練では、塩素漏れ、塩酸/フッ酸漏れ対応訓練を行うことができる。

 知的財産(IP)をAM施設で活かす、バンダイナムコグループも社会貢献活動で負けていない。同グループは、9月にオンラインで「第2回ガンダムカンファレンス」を開催した。ガンダムを通じて社会問題を考えるサステナブルプロジェクト「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」により、教育分野でのプロジェクト「ガンダムエデュケーショナルプログラム」を発表した。

 教育分野では、「ガンダムファクトリー横浜エデュケーショナルサポート」と「ガンプラアカデミア」を提供する。「ガンダムファクトリー横浜エデュケーショナルサポート」は、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で、18mの“動くガンダム”を目の前に、制作に携わってきた研究者や技術者、スタッフとともに、ものづくりの楽しさや将来のキャリア、プログラミングなどについて考えるきっかけづくりを行う学生向け体験型プログラム。横浜市教育委員会事務局と連携し、教育活動の一環としての活用を横浜市立小学校、中学校、義務教育学校および特別支援学校を対象に行う。

 また「ガンプラアカデミア」は、ガンプラ(ガンダムのプラモデル)を通してものづくりの楽しさと地球環境について考える、小学生向けの無償の授業パッケージ。ガンプラ組み立て体験と、プラモデルを生産する工場の設備や、生産工程、生産に関わる人々による仕事を紹介する配信映像を通して、優れた技術や持続可能なものづくりのための工夫への関心を高めることを目的としている。

 バンダイナムコはこのほかに、ガンダムを通じてリサイクル意識を高める「ガンダムリサイクル作戦」も始動しており、これは「ガンプラ」の枠の部分をリサイクルし、循環型社会の形成を目指すもの。回収量は21年4月から22年3月までの1年間で約10t程度を見込んでいる。やがては、ガシャポンのリサイクル活動も活発になるのだろう。

 AM企業は、コロナ禍でAM施設から客が離れ、これを取り戻すことに精一杯なのかと思っていたのだが、意外にも社会貢献活動にAM事業を取り入れ、持続可能な未来を見据えている。娯楽サービス提供と社会貢献の二刀流で事業を拡大しながら、今後も楽しい社会を切り開いていってほしい。
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