京セラ(株)は、半導体部品有機材料事業として半導体用有機パッケージのFCBGAやFCCSP、モジュール基板などを手がけている。半導体市場の活況を背景に引き合いが強まっており、京都綾部工場(京都府綾部市)、鹿児島川内工場(鹿児島県薩摩川内市)で数年かけて段階的に生産能力を増強する方針だ。同事業を担当する執行役員 半導体部品有機材料事業本部 本部長の小澤雅明氏に話を聞いた。
―― 製品ラインアップと生産拠点の概要からお聞かせ下さい。
小澤 有機材料事業はFCBGA、FCCSPやモジュール基板、プリント基板をラインアップする。うちFCBGAは売上高の3分の2ほどを占める。有機パッケージとモジュール基板は京都綾部工場と鹿児島川内工場、プリント基板は富山入善工場(富山市入善町)と新潟新発田工場(新潟県新発田市)が量産拠点で、滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)に研究開発機能がある。
―― 有機パッケージの引き合いが非常に強まっている。
小澤 半導体市場の活況を背景に、2020年初頭ごろからFCBGAを中心に高水準の需要が続いている。19年と比べるとパッケージベースで2~3倍もの引き合いがあり、供給が追いついていない状態だ。用途はデータセンターや通信基地局、ルーター、スイッチなどの5Gネットワーク関連で、FCCSPはスマートフォン関連の引き合いもある。
―― 綾部・川内で能力増強を進める。
小澤 京都綾部工場では数年前に建屋を建設していた第3工場に設備を導入し、22年半ばの稼働を予定している。FCCSP、モジュール基板を中心に生産する計画で、多連・小型基板の供給能力を引き上げる。需要動向を見ながら段階的に増強し、数年後をめどに倍以上に拡大させる。
一方、FCBGAは京都綾部工場の第1工場と鹿児島川内工場で生産している。両工場で増強しているが中心となるのは鹿児島川内工場で、今後数年をかけて生産スペースを拡張させる。こちらも数年後には従来比で能力を倍増させる計画だ。
―― 有機パッケージの技術的なトレンドと取り組みを。
小澤 FCBGAはデータセンター、ネットワーク機器向けが中心で、大型化、高多層化がトレンドだ。サイズは70mm角以上、層数は9-2-9層(コア2、片面9)を量産した実績があるが、今後もそのトレンドは継続する見通しだ。また、車載パッケージにおいても通信機能の高度化で7/5nmチップを採用する動きがあるため、今後は大型化、多層化が進むと予想している。また車載パッケージは高い信頼性が要求されるので対応を図っていく。
FCCSPは5Gシフトに伴い高速伝送対応のニーズが高まっている。このためABF材料により対応するが、FCBGAで使用した実績があるのでそのノウハウを活用していく。
―― プリント基板は新潟新発田工場を閉鎖する。
小澤 新潟新発田工場では通信基地局や産業機器向けの大型基板を生産しているが、汎用化が進み競争が激化している。このため22年3月末に閉鎖してこの分野から撤退する。残る富山入善工場では車載用基板を中心に生産しており、今後は車載に特化していく。
―― ほかの事業部門とのシナジー創出の取り組みは。
小澤 有機材料事業が属する「コアコンポーネント」セグメントには、有機パッケージと同じく半導体向けに展開するセラミックパッケージをはじめ、ファインセラミック部品や車載カメラなどがある。ターゲットとする5G、ポスト5Gといった通信関連を中心に、事業部間での情報交換など連携を進めたい。これまで例がなかった異なる事業部との共同開発にも取り組む方針だ。
―― 中長期的な開発の方向性は。
小澤 ビヨンド5Gともいわれる、次世代高速通信は大きなターゲットとなる。さらなる高速化に向けた材料の適用や、狭ピッチへの対応が必要になる。FCBGAのピッチは量産レベルでL/S10μmを実現しているが、さらなる微細化に向けて開発を進めている。また、パッケージ内部でチップを分散配置する動きもあり、より複雑な構造のニーズに対応できるよう製造技術を向上させていく。
(聞き手・副編集長 中村剛)
(本紙2021年8月19日号5面 掲載)