東芝・半導体事業の流れを汲む(株)ジャパンセミコンダクター(岩手県北上市北工業団地6-6、Tel.0197-71-3003)。旧岩手東芝エレクトロニクスならびに東芝・大分工場の事業・生産を継承して、2016年4月に発足した。足元は、折からの半導体需要の好調と、ファンドリー事業強化策がうまく重なり、ビジネス拡大が続く。21年6月から社長に就任した同社の川越洋規氏に、足元の市況や今後の事業のかじ取りを聞いた。
―― 今年6月に社長に就任しました。どのような会社にしていきますか。
川越 品質で絶対に負けたくはない。コストでは、確かに半導体製造インフラの安い、一部の海外製品と比較すると厳しい面もあるが、高品質の製品を安定してリーズナブルな価格で提供することで、海外勢との競争にも勝ち抜ける会社にしていきたい。
東芝グループの一員として、中期経営計画の東芝Nextプランを推進してきた。当社としては、第1段階でコスト改善や事業再構築を進め、筋肉質の経営体質に転換してきた。足元の第2段階は、市況も追い風となっており、工程の効率化や品質を中心に強化策を講じている。23年度からの第3段階に向けて、生産能力の拡張も実施、ファンドリー事業でしっかりと収益の出せる会社にしていく。
―― 主力製品を教えて下さい。
川越 車載、モーター制御系などのアナログICをはじめ、白物家電向けなどのMCU、複合機・バーコード向けなどのCCDリニアイメージセンサー、産業機器・スマートフォン(スマホ)向けなど各種のディスクリート製品を展開している。
岩手事業所の主力製品はリニアイメージセンサーで、全体の4割を占める。同センサーは、市場で70%もの圧倒的なシェアを誇っている。ディスクリート製品、車載向け製品は主に大分事業所で生産している。車載向け製品の構成比は3~4割に上っている。岩手事業所、大分事業所ともに東芝デバイス&ストレージ向け製品だけでなくファンドリー事業として外部顧客向けにも生産している。
―― 各事業所のプロセスルールを教えて下さい。
川越 岩手事業所は8インチウエハー対応で、プロセスは0.35μmが主体である。大分事業所は8インチを中心に、90nmまで対応しているが、主流は0.13μmとなっている。
―― コロナ禍でDXが加速、半導体市場に追い風が吹いています。
川越 足元の市況は絶好調だ。昨年秋ごろから製造ラインはフル稼働を維持している。特に車載向けなどのモーター制御系ICなどを中心に増産傾向が続いている。
―― ファンドリービジネスの状況は。
川越 足元では全社ベースの生産数量の4割程度まで急拡大してきている。なかでもアナログやパワーデバイス向けの受注が好調だ。一方で、親会社である東芝デバイス&ストレージ向けの生産も拡大してきており、生産能力の増強も急務となっている。バランスをうまくとりながら、25年には生産数を20年度比で2.4倍へ引き上げる計画だ。
―― 21年度の投資計画を教えて下さい。
川越 大分では6インチウエハーラインを終息させ、8インチ化への切り替えを含め能力増強策に着手している。岩手でも8インチラインの拡張を計画している。装置は発注済みで、未使用のクリーンルームスペースもあるので有効活用を検討したい。
―― この1年、国内外で半導体工場の火災・事故など相次ぎました。
川越 決してあってはならないことだと認識している。需給バランスがタイトな時に工場が止まれば、顧客に大変な迷惑をかけてしまうし、従業員の安全確保は最優先事項といえる。安全・品質面の強化にもつながることなので、工場運営や管理の仕方など積極的に手を打っていく。なお、岩手ならびに大分事業所では、プロセスの約8割は共通化しており、万が一の災害や事故があった場合でもBCP(事業継続計画)対策は万全にしている。
(聞き手・特別編集委員 野村和広)
(本紙2021年8月12日号1面 掲載)