商業施設新聞
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No.817

宇宙旅行


松本顕介

2021/8/3

 連休直前の7月21日のこと。東京駅ではスーツケースを押す人がチラホラ見られた。例年ならこの時期の東京駅は、夏休みに突入した子どもたちを連れた旅行者でごった返している。しかし、言うまでもなく、コロナ禍でそんな風景は奪われており、感染者数の増加は爆発的な勢いにある。スーツケースを押す人たちが多いのはワクチン接種が進んでのことなのか、4度目の緊急事態宣言下にあるが、緊張が緩んでのことなのか。

 重苦しい雰囲気とは無縁とばかりに、世界の大金持ちたちは、そんな地球を尻目に相次いで宇宙へ飛び出している。英ヴァージングループの創業者、リチャード・ブランソン氏や、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が宇宙企業「ブルーオリジン」を駆って宇宙旅行を敢行(観光)した。数十分間のフライトで、上に上がって落ちてきただけで、ほんの数分間無重力と青い地球を拝んできた程度で、それを旅行などと言えるのか、とぼやくのは小市民のやっかみだろう。お値段は数千万円。そんな、上がって落っこちてきたような宇宙旅行もだんだん技術が進化するとともに、価格も下がってもっと長く滞在でき、さらにはもっとくつろぎたいとか、数日過ごすとなれば「宿泊」に昇華していく。

行き交う人でごった返す駅構内
行き交う人でごった返す駅構内
 さらに地上的にいえば、“車中泊”だが、どこかに立ち寄りたいという需要とともに、宇宙ホテルが誕生し、月や火星に建設されるに違いない。ホテルも宿泊特化から滞在型など需要に応じてバラエティも広がる。さらに、何もない荒野にホテルだけぽつんとあるのはつまらないとばかりに、ショッピングセンター併設型など複合型に進化するはずだ。

 そこで問題がある。売り場をどう作るのか、MDはどう構築するか。商業施設新聞記者なら気になるはずである。お土産中心とするか、ちょっとした日用品も欲しいとか、やっぱりカフェはいるだろう。もうその頃の店舗はすべて無人で、店員はオールロボットになるであろう。商業施設だけでは機能しない。物流施設がいるだろう。ロケット発着場併設が必須だろう。そんなこんなで、より利便性が増し、どんどん人が押し寄せた結果、そのうち火星でも陽性者が出て、アルコール禁止だの時短営業なんて沙汰になるかもしれぬ。
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