商業施設新聞
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No.419

ランニング・イン・海外


松本 顕介

2013/7/30

 決してたくさんの機会があるわけではないが、海外出張で時間が許せばランニングをしようと心がけている。その一番の理由は、街を知ることができるからだ。

 今年5月、本紙の「商業施設新聞2000号記念ポートランド&シアトルライフスタイル業態視察ツアー」で、米ポートランドとシアトルに行く機会を得た。その時も当然、スーツケースの中にはシューズとウエアをしのばせていた。ツアー中の主な移動手段は車なので、街の地理は中々掴めない。そんな時、ランニングはちょうどいい。4泊した中で走れたのはポートランド3泊のうちの2回だけだったが、昼間見た、洒落たカフェやユニークなショップ、公園の位置関係が、走ることにより、自分の中で消化されていくのだった。

 走ったのは、いずれも早朝だった。松本大地氏がコーディネーターを務めた同ツアーは、朝から予定がびっしりで、昼間だけでなく夜も地元のレストランでおいしい食事とお酒、参加者との語らいを楽しむという充実のプログラムだった。そのため、走るチャンスがあるとすれば早朝しかない。他の参加者からは、「編集長のがんばりには感服します」と、お褒めの言葉も頂戴した。

蘇州では走るのを断念した
蘇州では走るのを断念した
 思い出すのは昨年7月、中国の蘇州と成都を視察した時のこと。今回と同じようにランニングのグッズを一揃え用意したが、蘇州は走れるような環境ではなかった。車道と歩道の間にバイク道のようなものが設定されてあり、そこをバイクがびゅんびゅん走り抜けていく。スクーターやオードバイの類というより、か細いフレームに原動機が乗っかっている、昔で言う「ラッタッタ」的な仕様。現地ガイドさんからも道を横断する時は特に気をつけるようにと注意を受けていたが、赤信号でもおかまいなしに突っ込んでくる。車も多く、排気ガスも気になったし、なんといっても7月の蘇州はとても暑い。残念ながら、この地が“マイご当地ランニングマップ”に載ることはなかった。

ポートランドの街中。突っ走るには少々しんどいが、たくさんのオブジェを楽しみながら走るのは楽しい
ポートランドの街中。
突っ走るには少々しんどいが、たくさんの
オブジェを楽しみながら走るのは楽しい
 一方、ポートランドはどうか。ダウンタウン、ウエストエンド地区の東側にはコロンビア川の支流ウィラメット川が流れ、「リバーウォーク」と銘打ったウォーターフロントは、その名の通り走ると気持ちがいい。街には、各街区(ブロック)が60m×60mと小さく設定されているため角地がたくさんあり、それぞれにしゃれたカフェやユニークな店舗が構えている。歩きやすい街、「ウォーカブルタウン」と呼ばれるのも頷ける。

 しかし、走るとなると、このように短く仕切られたブロックは少々煩わしい。すぐに交差点が現れるのでスピードを落とさざるを得ないし、信号が赤に変わろうとしているのを見れば、ペースを変えてダッシュする必要がある。まるでインターバル走。おまけに歩道と車道の段差が大きいため、交差点のたびに、よいしょっと飛び越えなければならない。

 このようにいろいろあるが、良い点もある。走っている時に、何度か立ち止まるべきところを進んでしまったのだが、ドライバーからクラクションを鳴らされるようなことは一度もなかった。これも、ポートランドに「人中心の街づくり」が浸透している影響だろう、と勝手に解釈し、“マイご当地ランニングマップ”には◎をつけた。
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