電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第441回

半導体製造における日本の装置と材料の強さを見てくれ


キラ星のごとく輝く企業が目白押しで、これが宝物

2021/7/16

 「日本国政府が本気になって、半導体産業への大型支援を打ち出したことは、非常に評価できる。しかして、半導体デバイス自体の日本のマーケットシェアは10%程度であり、最盛期の5分の1しかない。これを20%以上に上げるには大変な苦労がいる。ところが、半導体材料の世界では、日本はぶっちぎりで圧倒的な世界シェアを持っている。半導体製造装置においても、米国に比肩するほどの大きなシェアを持っている。装置と材料で戦うというのも1つの選択肢だ」

 こう語るのは、半導体業界の名アナリストとして知られる南川明氏である。確かに南川氏の指摘するとおり、半導体製造における日本の装置と材料の強さは、ちょっとやそっとのものではない。世界の半導体製造装置トップ15社ランキングを見ても、なんと日本企業がほぼ半数の7社もランク入りしていることはすばらしい。日本企業でトップをいく東京エレクトロンは、コーター&デベロッパーという重要な装置において、世界シェアをほぼ独占とも言ってよい状況なのだ。つまりは、東京エレクトロンのその装置が止まってしまえば、世界すべての半導体メーカーが製造を中止するしかないというほどのインパクトなのである。



 そしてまた、半導体のもっとも主要材料であるシリコンウエハーについても、信越化学とSUMCOが圧倒的なシェアを持っている。半導体不足は深刻化しており、向こう1年間めどが立たないと言われるほどの状況にある。これを踏まえて、信越化学もSUMCOも新工場新設を伴う大型設備投資を計画し始めた。半導体フォトレジストに至っては、日本勢のシェアが90%以上という状況であり、このことを懸念する諸外国はかなりいるのだ。

 半導体製造装置の部材/パーツメーカーについても、日本企業の強さは際立っている。半導体製造用石英ガラスの市場は、トップが信越石英、2番手は東ソー・クォーツ、3番手以下もMARUWA、フェローテック、テクノクオーツなど日本企業が大活躍している。

 半導体リソグラフィー用レーザーの供給メーカーとして知られるギガフォトンもまた、世界市場で50%以上のシェアを持っていると推定される。半導体装置向け高性能電源の世界で有名な会社が、富山に本社を構えるコーセルである。クリーン搬送機器事業において、世界トップシェアを持つロードポートをはじめとする真空搬送システムや、ウエハーソーターなどの製品展開を拡大しているのは、シンフォニアテクノロジーである。さらに、水回り機器の大手として知られるTOTOは、半導体装置向けセラミック部品のトップサプライヤーとなっている。

 東洋炭素もまた、黒鉛製品で高シェアを確保している。半導体工場向けにEFEMやウエハーソーターを展開するローツェ、半導体製造装置向けヒーター製品を展開するワッティーなど、とにもかくにも世界で大活躍する装置・部材のメーカーが目白押しなのである。ここにニッポンの生きる道があると考えるのは、ある種当然のことであると言えよう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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