電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第433回

丸文(株) 代表取締役社長 飯野亨氏


一貫提案・提供の総合力
デバイスは収益最大化へ

2021/7/16

丸文(株) 代表取締役社長 飯野亨氏
 会社設立後七十余年にわたり、「先見」「先取」の精神を貫き、エレクトロニクス商社業界をリードし続けている丸文(株)(東京都中央区日本橋大伝馬町8-1、Tel.03-3639-9801)。外国系半導体商材の取り扱いや技術サポート力に長け、1998年からは世界大手ディストリビューターのアローと合弁事業を展開するなど、積極姿勢を貫いている。同社を率いる代表取締役社長の飯野亨氏に、現況、丸文の強さ、商社の存在意義など幅広くお聞きした。

―― 足元の業績は。
 飯野 2020年度業績では、コロナ禍の在宅勤務やオンライン授業によりPC、通信機器・端末、民生機器向けの半導体、電子部品、モジュールの取り扱いが拡大し、全社売上高は前年度比17億円増収の2893億円で着地した。なかでもデバイス事業は通信機器向けで新規商権を獲得するなど、同24億円増収の2421億円の売り上げを確保した。ただし、顧客企業の慎重な設備投資が影響し、システム事業は同6億円減収の472億円となった。全社利益面では円高進行による為替の影響が響き、売上総利益が同23億円減益だった。

―― 21年度の見通しは。
 飯野 半導体不足や実需の見極め、材料価格の高騰などの懸念材料はあるが、全般的に需要は強い。滑り出しは好調であり、21年度は明るめに見ている。システム事業で20年度にプロジェクト遅延となった航空宇宙関連や、レーザー機器などリカバリーが見込める案件も多い。一方で、今年度から収益認識に関する会計基準の適用により、一部取引では利益相当額のみが売上計上となるため、前年度との比較はしづらい状況である。

―― 丸文の強さとは。
 飯野 デバイス事業では、最先端半導体、電子部品の販売に加え、丸文アローとのグローバルネットワーク網を武器に日系のお客様に世界規模で日本品質のサービスを提供できている点が強みだ。またシステム事業では、シミュレーターや組立・検査・加工・計測・解析などモノづくりに一貫したソリューションを提供できる点が強みである。このように当社は、世界中から秀でた新規商材を発掘し、お客様のモノづくりやコトづくりに貢献していく、これがエレクトロニクス専門商社としての当社の創業来のDNAである。また技術サポート力にも自信を持っている。

―― その自信とは。
 飯野 当社は、最先端技術を搭載した欧米メーカーの製品を航空宇宙・防衛・自動車・産業・情報通信市場へ何十年にもわたり展開してきた実績がある。この実績を支えてきたのは当社の技術力である。またグループ会社のフォーサイトテクノによる保守メンテナンス・校正などのフィールドサポートはお客様から高い評価を得ている。他のグループ会社である丸文通商では、医療分野においてMRIやCTなどの高度医療装置の販売などで長年にわたる実績を有している。地域に密着した技術サポート力にも定評がある。最近ではPCR検査キットの販売も開始した。

―― デバイス事業では新たな取り組みが目立ちます。
 飯野 収益最大化を目指しており、既存事業のさらなる基盤強化と高付加価値ビジネスの推進、成長市場での事業拡大、新ビジネスモデルの構築を進めている最中だ。20年にはアナログICメーカーの米MPS社の取り扱いを開始、21年2月には京都大学、(株)マリと共同開発したミリ波レーダーセンサー活用の非接触見守りセンサーを上市した。
 また、成長市場では、除菌機能搭載のアイオロス社製AI搭載介護支援ロボットを20年12月に介護施設へ導入したほか、ワイヤレスデータ通信機能付きのステトミー社製電子聴診器の取り扱いも開始し、遠隔医療向けサービスへの展開を見据えている。
 さらに20年6月には、米オシア社空間伝送型ワイヤレス給電技術のライセンス販売を開始し、サブスクリプションビジネスにも挑戦中だ。AIを活用し、人流と連動したデジタル値札表示など、イノベーション創出にも貢献している。

―― 商社のあり方も変化してきましたね。
 飯野 当社は仕入れ先800社を有し、多岐にわたる基幹市場へ事業を展開している。そこから得た鮮度の高い情報は、当社の財産である。そして、デバイス事業・システム事業が一体となった提案力・高度な技術サポート力、これらが強さの源泉であることは不変だ。そのうえで、情報をとりまとめ、電子デバイスから組立・検査・加工・計測・解析まで一貫してモノづくりに貢献できるソリューションや、AIなどの先進技術を活用した新たなサービスなど、常にお客様目線で価値を提供できるよう心がけている。
 社員にもそのような風土が定着しており、社員の担当分野・商材に関する組織を横断した社内セミナーの開催や、デジタルマーケティングの促進など、お客様との関係をより強化できる取り組みを加速している。現在の環境変化をチャンスと捉え、新たな商社像を切り開いていきたい。


(聞き手・高澤里美記者)
(本紙2021年7月15日号3面 掲載)

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