電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第409回

米ファンドリー大手のGF、特殊&レガシープロセスで復活の狼煙


シンガポールに新工場建設

2021/7/9

 2021年の年明け以降、半導体の供給不足が大きな話題となっているが、根幹には需要急拡大に伴うファンドリー(受託製造)企業の生産能力が逼迫していることが挙げられる。最先端プロセスで独走するTSMCが顧客需要に応えるべく、積極的な生産能力拡張を進めて注目を集めるなかで、2番手グループに位置づけられる他のファンドリー企業も今年に入って、続々と大型投資を決めている。

 米国に本社を構えるグローバルファウンドリーズ(GF)もその1社だ。同社はこれまで最先端のCMOSプロセスを追求して、TSMCなどのトップグループに競争を挑んでいたが、技術開発の遅れなどにより、最先端領域から撤退。SOI(Silicon in Insulator)やレガシープロセスに活路を見出す戦略に方針を転換した。その戦略転換がここにきて実を結びつつあり、足元での大型投資につながり始めている。

前身は「AMD前工程工場」

 GFは、米AMD(米カリフォルニア州サニーベール)とアブダビのAdvanced Technology Investment Company(ATIC)の共同出資により2009年4月に設立された半導体専業ファンドリー。AMDが保有していた前工程製造拠点を擁し、強力な資本力を背景に、米国本社のファンドリー企業として唯一世界規模で展開。その後、シンガポールのチャータードセミコンダクターを買収、事業規模を拡大させている。

 生産拠点は独ドレスデンのほか、ニューヨーク、シンガポールの世界3カ所に300mm工場を保有。15年にはこれに加えてIBMから取得した生産拠点(イーストフィッシュキル、エセックス・ジャンクション)の2拠点も加わっている(その後イーストフィッシュキル工場はオン・セミコンダクターに売却)。

新棟建設に着手しているシンガポール工場
新棟建設に着手しているシンガポール工場
 設立当時から、TSMCの対抗勢力として期待を集めていたが、近年は微細化競争にて後塵を拝す状況が続いていた。

 こうしたなかで、同社は18年8月末に7nm世代のプロセス開発を無期限で延期すると発表。18年にCEOに就任したTom Caulfield 氏のもと、バルクCMOSプロセスではなく、特色あるファンドリー事業を展開していく方針に転換を図った。

 事業見直しに伴い、IBMから取得したイーストフィッシュキル工場はオンセミに、またシンガポールの200mm工場は台湾ヴァンガードセミコンダクターに売却。今後の事業運営を危惧する声も聞かれたほどであった。

SOIウエハーの調達体制強化

 しかし、世界的な半導体不足を前に、GFも復活の狼煙を上げつつある。SOIなどの特殊プロセスやCMOSプロセスのなかでも、レガシーノードに注力する戦略が現在の半導体市況にうまく合致しているとも見て取れる。SOIはロジック向けに使われるFDSOIプロセスのほか、足元では300mmベースのRF-SOIプロセスの需要が拡大している。5G通信の商用化に伴い、スマートフォンに用いられるRF部品(パワーアンプやスイッチ)におけるSOIニーズが拡大。ファンドリー業界ではGFとイスラエルのタワーセミコンダクターがSOIファンドリーの2強と見られており、両社への引き合いが増えている。

 SOI需要の拡大に伴い、GFではSOIウエハーの調達体制を強化。SOIウエハー最大手の仏Soitecと300mm SOIウエハーの長期供給・調達契約を締結しているほか、21年6月には台湾グローバルウェーハズ(GWC)と総額8億ドルの長期供給契約も結んでいる。8億ドルのうち2億ドルはGWCの設備投資費用としてGFが拠出したもので、これをもとにGWCはミズーリ州にある工場(旧MEMC)で300mm SOIウエハーの量産ラインを構築する。

年45万枚分の能力追加

 さらにここにきて、300mm主要拠点の1つであるシンガポール工場で新棟の建設も発表した。23年の立ち上げを予定しており、年間45万枚分の生産能力が追加される見通し。建設する新棟はRFやアナログ/パワー、不揮発性メモリーの生産能力拡張を目的としたもの。シンガポール経済開発庁ならびに主要顧客とのパートナーシップをもとに、総投資額は40億ドル以上となる見込み。新工場には2.3万m²のクリーンルームが構築され、技術者やエンジニアを含めて、約1000人の雇用が創出されるという。新工場稼働により、シンガポール工場全体の生産能力は年間150万枚に到達するとしている。

 世界的な半導体の供給不足を受けて、同社も生産能力の拡張に動いており、今回のシンガポール新棟のほかにも、ドレスデン、ニューヨークでも増強投資も進めていく考えを明かしている。

電子デバイス産業新聞 編集長 稲葉雅巳

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