電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第437回

2020年半導体世界ランキング1~3位は不動の強さなのだ


インテル、サムスン、SKはそれぞれ巨大投資の構え

2021/6/18

 コロナ禍に世界が見舞われた2020年にあって、半導体の世界ランキングは1~3位まで不変であり、まさに不動の強さを見せつけた。ただ1位のインテルは、データセンターのサーバー需要に支えられ順調に伸びたものの、成長率は7.7%にとどまった。これはひとえに、AMDがTSMCの最先端プロセスを活用し、実に前年比50%増で伸びたことにより、CPU市場を少しく奪われたからであった。そしてまた、世界のIT企業がファブレス半導体企業になりつつあり、この影響も少しく被ったのである。

 2位のサムスンも、相変わらずの強さを発揮してはいたが、前年比の伸びは8.4%増にとどまった。もちろん、業績自体は絶好調であったが、いかんせんNANDフラッシュの価格下落の影響が大きかった。そしてまた、立役者のイ・ゴンヒ氏が死去したことによるトーンダウンも否定できなかった。



 3位のSKハイニックスは、データセンター向けやスマホ向けのDRAMがそれなりに伸びたことによって、前年比16%増という好成績を収めた。同じく4位のマイクロンも、DRAMの好調に支えられ、11.3%増であった。

 インテルの強さはとにかく際立っている。同社は半導体企業売上高ランキングでは、1992~2016年の25年間にわたりトップを堅持した。17年と18年は韓国サムスン電子に首位を許したものの、19年そして20年と首位に返り咲いていたのであった。

 データセンター向けに新製品投入を加速しており、またAI向けチップについても注力している。さらに、次世代モバイルPCプラットフォーム、3次元パッケージ技術といった数々の新技術を生み出している。不動の世界チャンピオンとも言われるインテルの動向には常に注目が集まる。

 先ごろ半導体業界を震撼させた出来事の1つが、インテルのファンドリービジネスへの本格参入だ。ファンドリー事業戦略「IDM2.0」を立ち上げて正式に事業化するとアナウンスした。また自動車用半導体不足の解消に向け、ファブレス企業と協力して生産・供給していくことも明らかにしている。

 インテルのファンドリービジネスのカギとなるのが、チャンドラーに新設する2本の12インチ工場だ。7nmを採用し、24年にも稼働を開始する計画だ。投資額は200億ドル(約2兆1600億円)と見込まれている。

 なお、同プロジェクトに向けて同州とバイデン政権がインセンティブを提供する見込みだ。具体的には、米国の半導体製造や研究などを支援する法案「CHIPS for America Act」による連邦助成金が含まれるのだ。

 世界チャンピオンのインテルを追い上げにかかるサムスン電子は、これまで相対的に弱かったシステム半導体、つまりは非メモリー半導体に力を入れていく方針である。なんと19年4月からの12年間で非メモリー向けのR&Dと工場建設に12兆円を投じるというのだ。

 サムスン電子が発表した20年の業績は、売上高が569億1200万ドルで続伸であった。好業績は、トップシェアを堅持するDRAM、NANDフラッシュというメモリー半導体が牽引した。20年に全DRAMの売上高は前年比5%増の656億ドル(約6.7兆円)強、NANDは同23%増の568億ドル(約5.8兆円)となり、同社のシェアは順に42%、34%に達した。

 韓国半導体業界では、サムスン電子は21年に初めて全社売上高250兆ウォン(約23.8兆円)を突破し、営業利益も50兆ウォンに迫ると見通している。ちなみに営業利益は、17年に53兆ウォン、18年に58兆ウォンを記録したことがある。

 今後については、ファンドリー事業の拡大が期待され、受注も大きく伸びていくと予想されている。ファンドリーで10nm以下の超微細プロセスを提供できるのは、現在のところ同社とTSMCだけ。世界ファンドリー市場は、TSMCがシェア54%、サムスン電子が同17%で掌握しており、超微細プロセスだけでは両社はそれぞれ60%、40%のシェアを占めている。サムスン電子は21年、ファンドリーを含む非メモリー半導体事業で売上高20兆ウォン程度となる見通しを立てているのだ

 SKハイニックスは、ソウルから車で1kmくらいの距離の京畿道龍仁に大規模な半導体工場の建設を進めている。この龍仁の半導体クラスターは、サムスンの長期計画とほぼ同規模で、28年までの10年間で11兆円を投資する計画であり、まさにサプライズなのだ。

 DRAMで地位を築いたSKハイニックスの成長のスピードは、ここに来てすさまじい。16年当時の3倍近くにまで来ているのだ。そしてまた重要なことは、お家芸のDRAMに加えて、NANDフラッシュを強化していることだ。

 19年6月末に半導体業界では初めて第6世代(6G)のNANDフラッシュメモリーを開発した。つまり、128層の4D-NANDフラッシュを清州工場で量産することになった。清州のNANDフラッシュ向け新工場には1.9兆円を投じている。

 また、DRAMを量産する利川の新工場内にEUVを採用したM16を完成させ、次世代DRAMの量産で先行する考えだ。同社を率いる会長のチェ・テウォン氏は韓国経済界のトップに上り詰めており、SKの世界的認知度は非常に高まってきた。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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