台湾屈指の不揮発性メモリーベンダー、マクロニクス・インターナショナル(旺宏電子、台湾新竹科学園区)。ROM、NOR型とNAND型のフラッシュメモリーなどを展開し、うちROMとNOR型は世界市場シェアトップを誇る。同社の創業者で現会長兼CEOの呉敏求(Miin Chyou Wu)氏に話を聞いた。
―― 事業の背景や強みは。
呉 インテルなどの半導体メーカー勤務後の1980年代に米国から台湾に戻り、89年にマクロニクスを設立した。その際いかに日本半導体メーカーに対抗できるかを考えた。当時、日本勢がシェアを伸ばし、米国勢がその影響で業績を悪化させていたが、それは日本勢の品質が高く、かつ生産安定性などで低コスト化に優れていたためだった。
そこで当社は日本勢以上に優れた生産体制を確立することに注力した。具体的には、コンピューターを工場に導入し、レシピ管理やデータのフィードバックを行った。特に重要視したのがデータだ。数多くの統計学のスペシャリストを採用し、半導体プロセスエンジニアとともに徹底的に分析を重ねた結果、高品質と低コスト化の両立に成功した。現在ビッグデータの活用は当たり前になっているが、当社は30年以上前に行ったことになる。
品質面では世界トップを自負している。自社製品で最先端のppb(parts per billion)レベルを提供できる唯一の半導体メーカーだ。多くの日本企業からも高い評価を得ている。
特許ポートフォリオも大きな強みだ。台湾では特に技術開発に注力する半導体メーカーとして知られているが、取得特許数は8000件以上だ。2018年にはNANDの特許を巡る東芝メモリ(現キオクシア)との訴訟に勝利し、和解金を獲得している。
―― 取り扱い製品は。
呉 ROM、NOR型とNAND型のフラッシュ、3D-NANDを開発・製造・販売し、ファンドリー事業も一部行っている。
ROMはNOR型と並んで事業の柱だが、事業参入は日米半導体摩擦の時期に遡る。米国は日本に対して米国半導体製品の採用を要求した。そこで当初、マクロニクス(後にマクロニクス・インターナショナルに改称)でROMを生産し、日本市場に供給する戦略を採った。現在では台湾で生産している。
最大の顧客は任天堂で、同社の歴代のゲーム機に採用されてきた。最近では据置型ゲーム機「Nintendo Switch」の売れ行きが伸びているため、ROM事業は好調だ。ROM市場では長年にわたり世界市場シェアトップを堅持している。
―― ROM事業成功の背景を。
呉 高品質、高歩留まり、サイクルタイム短縮の3つが挙げられる。サイクルタイムでは、従来コードの書き込みに2週間かかっていたのを1日に短縮した。こうした理由から任天堂は当社の製品を長年にわたり活用している。また読み出し回数は1億2000万回に対応し、性能面でも他社と差別化を図っている。
―― フラッシュ事業は。
呉 ROM事業の成功をベースに、NOR型フラッシュ、NAND型フラッシュ、そして3D-NANDと展開していった。NORはパラレル型とシリアル型のいずれもラインアップし、容量、ピン数など顧客の要求に合った製品を提供している。ROMと同様、世界市場シェアトップだ。用途は通信機器、民生機器、自動車など様々で、台湾、日本、ドイツなど多くの顧客に採用されている。主要顧客には世界的な企業が数多く含まれる。
(聞き手・東哲也記者)
(本紙2021年6月17日号1面 掲載)