仙台と東京で新たな情報発信スタジオが同時期に開業した。1つは東北・新潟の観光情報を発信する複合施設「CROSS B PLUS(クロス ビー プラス)」(新仙台ビルディング1階)。もう1つは、バンダイナムコグループが最先端画像技術を駆使して次世代エンターテインメントを発信する「MIRAIKEN studio」だ。主体と情報発信の対象はそれぞれ異なるが、インターネット時代の未来を見据えて情報発信する重要性で共通するものがあると感じた。両施設の開業に接する機会があったので紹介する。
(株)仙台ビルディング(仙台市青葉区)、(株)河北新報社(仙台市青葉区)、(株)第一広告社(仙台市青葉区)の3社は、新仙台ビルディング1階で複合施設「CROSS B PLUS」を5月26日に開業し、「イベントスペース事業」「メディア・PR事業」「デジタル事業」「カフェダイニング・クラフト事業」「SDGs推進」の5事業を開始した。この5事業は、「芭蕉の辻プロジェクト」と呼ばれ、東北・新潟の新聞社や自治体と連携し、記者会見やPRイベントの開催などを通じた情報発信拠点となることを目指している。
開業日前日の5月25日には、芭蕉の辻プロジェクト「CROSS B PLUS」のオープニング記念シンポジウムが新仙台ビルディング1階で開催された。出席した宮城県知事の村井嘉浩氏は、「東北・新潟エリアにおけるアフターコロナの広域観光について重要な点は『段階的な誘客エリアの拡大』『共通テーマによる情報発信』『新しい旅のスタイルの確立』の3つ。新型コロナウイルスの影響で、遠くに行くことがままならない、また遠くから来ていただくこともままならない現在、地元の観光資源を見つめ直す良いきっかけとして、東北・新潟を周遊する企画を考えていきたい」と話した。
また、東北経済連合会会長の海輪誠氏は、「地域社会の持続性と魅力を高め、稼ぐ力を高め、交流を加速するための新ビジョン『わきたつ東北』(2030年めど)を進めている。見渡す先には『次世代放射光施設』がある。業種など問わず、幅広く活用できる施設として2024年度から供用開始する予定だ。また、今夏に東京・秋葉原で行う『東北ハウス』や、ポストコロナを見据えた『デュアルライフ東北』にもオール東北で働きかける。そのような中で、情報発信は欠かせないものであり、『CROSS B PLUS』は貴重な場所だ。日本全国、世界に向けた地域の情報発信拠点として、また人々が集い交流する場として、発展していくことを祈念する」と話した。
また、バンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)も、次世代のエンターテインメントを創造・発信するスタジオ「MIRAIKEN studio」を、バンダイナムコ未来研究所(本社所在地)に自社スタジオとして5月26日にオープンした。同社も情報発信を重要視し、xR(ARやVR)技術、リアルタイムモーションキャプチャを備え、巨大で高画質なLEDディスプレイ4面ステージを常設した。最先端の映像技術や、IP(知的財産)を打ち出している点で、東北・新潟とは趣を異にするものの、情報発信を重要視する点で共通している。施設のデザインは、丹青社が担当した。担当者は「世の中で情報発信スタジオの設置が増えているが、xR技術、IP、モーションキャプチャ技術を組み合わせた情報発信拠点は例がない」と話す。
バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長の宮河恭夫氏は「当社は、コロナ禍において、エンターテインメントの重要性やIP(知的財産)がきっかけとなり生まれるコミュニティの力を再確認したことで、オンラインエンターテインメントを強化していく必要性を感じ、このたび自社スタジオをオープンした」と説明する。
5月26日には、MIRAIKEN studio Opening Ceremonyが開催された。同セレモニーでは、xR技術を使用し、実際の宇宙映像(三井物産提供)をガンダムと融合した映像を背景にしたSUGIZO氏の演奏や、AR技術を使用してナビゲーターのヒャダイン氏、金澤朋子氏と「アイドルマスター」シリーズのアイドルである天海春香の共演などが披露された。
インターネットへの依存度が高くないおじさん記者の筆者は、ゲストの人たちのことをあまり知らなかったのだが、ネットの世界では有名人で、バンダイナムコエンターテインメントによるこのセレモニーへの力の入れようが伝わった。ネット社会では、独自の有名人が続々と現れ、リアル社会やテレビとも異なる別の空間を形成している。そのネット社会に向けた情報発信の重要性を改めて知らされた思いがした。
東北・新潟と、バンダイナムコでは発信する情報の種類は異なるが、発信することによって自分たちのファンを増やしていくのだろう。発信力が大事であることは、いつの時代も変わりはないのだが、手法の進化はめざましい。