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第427回

日本メクトロン(株) 取締役社長 土居清志氏


電動車用基板で反転攻勢
グローバルで投資を再開

2021/6/4

日本メクトロン(株) 取締役社長 土居清志氏
 NOKグループでFPC大手の日本メクトロン(株)(茨城県牛久市奥原町1650-11-1、Tel.029-830-9150)が反転攻勢に出る。国内外でドラスティックな事業再構築を推進、2022年度(23年3月期)には黒字転換を目指す。スマートフォン(スマホ)に偏る顧客構成を見直し、市況に左右されにくい、安定的かつ持続可能な事業体制づくりに邁進する。次の成長市場をEV/PHVなどの電動車両に定め、国内外で投資を再開する。将来的にはスマホに並ぶ構成比まで引き上げる。陣頭指揮を執る同社の土居清志社長に足元の市況ならびに復活に向けた処方箋を聞いた。

―― 営業損失の続く厳しい経営状況ですが。
 土居 FPCは将来性ある事業としてとらえている。今は厳しくてもしっかりと立て直しを行い、再成長を目指す。まずはアプリケーション含めて偏りのあるスマホ向けを見直す。中長期的に伸長する車の電動化を見据え、バランスをとりたい。当社が得意とする付加価値の高い高難度製品の受注拡大による成長を図る。国内外で事業再編を進めており、より効率的に顧客対応する。当初、利益でブレークイーブンを見込んだ22年度中には黒字化を目指したい。

―― 21年3月期の業績を振り返って。
 土居 中国のスマホ端末メーカーの需要が好調に推移し、ハイエンド端末も20年度下期から回復したものの、スマホ全体では前年度比減収となった。一方、巣ごもり需要でPC用途などが堅調に推移した。エコカーなど車向けも急回復しており、受注は特に20年10~12月に入り前年同期並みに回復した。1~3月も好調が持続して車載向け基板は増収した。この結果、売上高は前年度比横ばいの2818億円となった。利益面は売上減少の影響もあったが、人件費や経費などの固定費削減で営業損失は1年前の126億円から84億円まで圧縮した。

―― 足元の状況と22年3月期業績見通しは。
 土居 新型コロナの感染拡大の影響など依然読み切れないところがあり、不透明な環境下だが、21年度通期で前年度比微減の2780億円、営業損失60億円を見通している。スマホ向けは低調だが、大底は打ったとの認識だ。HDD向けの減少幅も下げ止まりつつある。継続して車載用途などは拡大している。

―― 国内外で大規模な事業再構築にも着手しました。
 土居 国内は鹿島工場の閉鎖に加え、全従業員の3割弱にあたる300人の希望退職者も募った。組織体制も日本メクトロンの主力拠点である牛久事業所内にあるグループ企業のMEK-J(牛久市奥原町)に製造・開発部門を移管させ、営業・管理部門などを本社機能に集約した。これらを4月1日付で実施した。
 海外は、アプリケーション別に拠点網を再構築して効率運営を目指す。課題のスマホの生産拠点は中国の蘇州・珠海とベトナム工場に集約している。アフターケアなどのサービス含めてこれらの拠点で一体運営する。アモイ工場は20年12月で閉鎖した。台湾も2拠点あるが、当初は機能や生産体制を見直して事業規模を従来の半分に縮小する計画でいたが、車載向けが急回復してきているので、これは目下見直している。

―― 車載向け基板が好調のようですね。
 土居 20年7~9月から受注が戻り始め、前述のとおり10~12月はほぼ前年同期並みの水準まで回復した。20年度は売上比率で約2割だが、今後この比率を大きく向上させる。車載向けはLiBの監視システムやインバーター周りの受注を強化している。国内顧客向けも23年度にかけ需要が拡大する。中国の大手2次電池メーカーへの納入も拡大する。先の台湾工場の再編を見直し、25年度ごろまでの受注が読めてきている欧州市場向けを中心に、必要な能力増強投資を検討していく。

―― 21年度の展望を教えて下さい。
 土居 攻めの展開になる。売上高は前年度比で大きく変わらないが、構成比が変化してくる。スマホなどの不採算部門には厳しく対応して、いたずらに規模は追わない。一方、車載向け市場では攻勢をかける。親会社のNOKとも組んで、早急に車載向け売上高を700億円前半まで拡大させる。投資もメリハリをつけ実施する。基本的には「地産地消」でいく。

―― 投資の考え方を教えて下さい。
 土居 20年度は、固定費圧縮を最優先に考えたため投資を絞り込み、114億円にとどめた。21年度は125億円へと引き上げる。状況によってはさらに引き上げることもある。車載向けは台湾に加え、蘇州でも強化する。車載向け基板の後工程が中期的に足りなくなる恐れもあるため、新棟建設も視野に入れる。ハンガリーは2年前に新棟建設を実施しているが、さらに基板の後工程を中心に能力増強を検討していく。一方でスマホ向けも強化する。ベトナムでは新規アイテム向けなど前工程を強化し、珠海でも一貫生産を強化していく。


(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2021年6月3日号5面 掲載)

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