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第426回

(株)安川電機 取締役 常務執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏


新ソリューションの提案強化
中国での生産は過去最高レベル

2021/5/28

(株)安川電機 取締役 常務執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏
 (株)安川電機(北九州市八幡西区黒崎城石2-1、Tel.093-645-8801)は、様々なメカトロニクス製品を展開しており、産業用ロボットでは世界トップクラスのシェアを持つ。2月には産業用ロボットの累積出荷台数が50万台を突破し、新たなソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」の提案も強化している。取締役常務執行役員でロボット事業部長の小川昌寛氏に話を伺った。

―― ロボット製品の需要動向について。
 小川 2020年度(21年2月期)のロボット部門の売上高は前年度比8%減の1395億円だった。新型コロナウイルスの影響で設備投資が停滞したことから年度前半に販売が伸び悩んだが、年度後半から中国を中心に需要が増加し、欧州地域でも回復傾向がみられ、半導体関連のロボットなども堅調に推移した。主要市場である自動車分野も年度末にかけてグローバルで設備投資が回復しつつあり、21年度に入ってもロボット製品の引き合いは堅調に推移している。

―― ロボットの生産体制は。
 小川 国内では八幡西事業所(北九州市八幡西区)と中間事業所(福岡県中間市)、海外では中国・常州市とスロベニアで生産している。直近は中国での生産台数が過去最高レベルとなり、スロベニアでも生産能力を徐々に高めている。また、ロボットの生産における自動化比率を高め、需要変動に対して柔軟に対応できる体制づくりに力を入れている。

―― ロボットに搭載する電子部品について。
 小川 近年、電装化・電動化の加速によってクルマにおける電子部品の搭載点数が増え、EVやコネクティッドカーは「走るスマートフォン」と呼ばれることもある。そして同じような流れが産業用ロボットの領域でも起こる可能性があるとみており、産業用ロボットにおける電子部品の重要性は今後さらに高まっていくだろう。

―― 注力されていることは。
 小川 製造業のDX・スマートファクトリー化への関心が高まるなか、当社の自動化技術に「デジタルデータのマネジメント」を加えたソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」の提案を強化している。当社はロボット、サーボ、インバーターといったメカトロニクス製品によるセル生産の自動化に強みを持つが、そういった設備や装置のリアルタイムデータを収集する「YASKAWA Cockpit」、当社のコンポーネントとロボットの一括制御を可能にする「YRMコントローラ」、AIをはじめとしたソフトウエア技術などを融合し、生産ライン全体の状況確認、オーダーの実行状況や工程別の進捗状況、工程内の作業別進捗状況などのデジタルデータソリューションをお客様ごとに提供するものだ。
 ロボットなどのフィジカルの情報をサイバーの領域に取り込み、コンピューティングパワーによる分析を行ったうえでフィードバックし、最適な答えを導き出す製造現場のサイバーフィジカルシステムともいえ、生産ラインをデジタルデータで管理することで段取り換えを自動で行ったり、サーボモーターのデータからロボットが自ら最適な軌跡を作成するなど自律分散型のモノづくりを実現できる。

―― ソリューションの拡大に向けた取り組みは。
 小川 現在、幅広い企業と様々な技術連携を進めており、特にサイバー領域に強みを持つ企業とのパートナーシップが拡大している。サイバー関連の企業からみてもアイキューブメカトロニクスによってロボットエンジニアリングの領域に参入することができる。こういった新規参入はロボット産業の活性化やロボットの活用領域の拡大にもつながり、アイキューブメカトロニクスが持つ価値の1つだと考えている。

―― ロボット事業の方向性を。
 小川 人手不足や働き方改革、直近は製造現場における三密回避といった面からもロボットの導入を検討される企業が増え、モノづくりのかたちも少品種大量生産から変種変量生産へとシフトしている。ただ、産業用ロボットの業界はそういったニーズの変化に伴うお客様の要望に適切に応えられてはいない。
 そうしたなか当社のアイキューブメカトロニクスは、先にも述べたようにフィジカルとサイバーの高度な融合によって、変種変量生産にも対応するソリューションを提供でき、お客様の課題解決につながるプラットフォームになると強い自信を持っており、その価値を今後もしっかりと伝えていきたいと思う。


(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2021年5月27日号1面 掲載)

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