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第425回

東京大学 システムデザイン研究センター(d.lab)長(大学院工学系研究科教授) 黒田忠広氏


半導体のエネルギー/開発効率10倍に
装置/材料を巻き込み、外資も参加

2021/5/21

東京大学 システムデザイン研究センター(d.lab)長(大学院工学系研究科教授) 黒田忠広氏
 東京大学で大学院工学系研究科教授の任にある黒田忠広氏は、国家戦略と結びつくともいわれるシステムデザイン研究センター(通称d.lab)のセンター長の重職を務めている。
 黒田氏は三重県四日市市生まれ、東京大学を出て、1982年に東芝に入社する。半導体設計の仕事に関わり、2000年までの18年間を働いた。当時、黄金技と言われた東芝のDRAMの世界を知る人であり、設計トレンドの最前線を歩いてきた人でもある。この黒田教授のd.labにおける活動と、ニッポンの半導体産業の方向性などについて話を伺った。

―― 東芝における仕事で記憶に残ることは。
 黒田 とにもかくにも、設計のデファクトスタンダードに取り組んだことだ。当時は東芝、GE、シーメンスの連合軍が形成されていた関係で共通のプラットフォームが望まれており、ここに注力した。その後はトランジスタのしきい値電圧で使い分ける方法を設計ベースに置くという研究を続けていく。20年間を東芝で過ごしてきたが、最終的な研究開発は3Dにするためのチップであった。データ接続を磁界結合するというものであり、これにのめり込んだ。この延長線上に現在のd.labが見えていた、とも言えよう。

―― d.labの最大のミッションは何ですか。
 黒田 一言で言って、エネルギー効率10倍、開発効率10倍という画期的な半導体を作り上げることにある。時あたかもグリーンイノベーションであり、カーボンニュートラルであり、世界を巻き込む運動論としてSDGsが叫ばれている。このグローバルな展開のなか、東大は、そして日本という国家は、半導体でSDGsに徹底貢献するという考え方が必要だ。

―― 東京大学の五神真総長もd.labの活動を徹底支援する方向ですね。
 黒田 総長は光の専門家であり、EUV(極端紫外線露光)についても詳しく分かるというほどの方だ。東京大学は今後の設計開発推進という意味で、台湾のTSMCと提携を決めた。このパートナーシップについても、総長は先頭に立って旗振り役をやってきた。半導体という世界でいよいよ東京大学の出番が来たのである。

―― どんなチップを開発していくのですか。
 黒田 デザインルールで言えば、超微細のナノプロセスで日本は遅れをとってきた。これを一気に取り返したい。7nm、5nm、3nmのプロセスに合わせ込む半導体を自前で作りたい、という考えだ。もちろん、これは回路設計のことを言っている。製造そのものは、世界最大かつ最強のファンドリーであるTSMCをフル活用する。

―― 専用チップのアクセラレーターが必要と言われますね。
 黒田 これまでの半導体の歴史では、やはり標準的なマイクロプロセッサー、標準的なメモリーが最重要視されてきた。しかしながら、IoTの拡大で、徹底的にエネルギーを節約するチップの方に比重が移りつつある。そしてまた、IoT時代には、あらゆるものにおいてカスタマイズが進んでいく。たとえば、次世代自動車に使われる専用チップなどは、トヨタ、日産、ホンダが自ら半導体を作り上げるという方向性も強まるだろう。東京大学d.labは、こうした企業の動きに連動し、しっかりと支援していく。

―― d.labに集結している企業について。
 黒田 キオクシア、ソニー、ルネサス、ソシオネクストなど、日本デバイスメーカーの有名どころはみな参加を決めている。そしてまた重要なのは、東京エレクトロン、SCREEN、アドバンテスト、ニコン、ディスコなど名だたる装置メーカーがd.labに集結していることだ。もちろん、材料王国ニッポンであるからして、シリコンウエハーの信越、フォトレジストのJSR、さらにはフォトマスクの大日本印刷、凸版印刷なども参加している。これに加えて、インテル、アナログデバイセズなどの米国勢、さらには韓国サムスン、台湾TSMCも参画している。これはとんでもないことになる、との思いがある。

―― 経産省とも直結するラインを組んでいますね。
 黒田 d.labはオープンな環境を提供している。しかし、この受け皿となる経産省の組織であるRaaSはノットオープンの組織だ。もちろん、東京大学で上げてきた成果は、国のプロジェクトとして大輪の花が咲くことを目指している。これからの50年間は、これまでの50年間と全く違う世界が出現する。その真っ只中を切り開くのは、半導体以外にはない。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2021年5月20日号1面 掲載)

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