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第424回

パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチュアリング 会長 フランク・ファン氏


ファンドリー事業で急成長
「逆ムーアの法則」を提唱

2021/5/14

パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチュアリング 会長 フランク・ファン氏
 汎用メモリーメーカーからファンドリーへ転身し、急成長を果たしたパワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチュアリング(PSMC、台湾新竹市)。ロジックとメモリーの両方の技術を保有し、ミッドレンジ品に注力したファンドリー事業を展開する。加えて、サプライチェーンの健全化を目指す「逆ムーアの法則」を提唱している。会長のフランク・ファン(Frank Huang、黄崇仁)氏に話を聞いた。

―― 事業の背景から。
 ファン 1994年にパワーチップ・セミコンダクターとして設立した。当初、テクノロジーパートナーの三菱電機とともにDRAM事業を立ち上げた。96年には「ファブ8A」(8インチ)が完成し、16MビットDRAMの量産を開始した。その後、エルピーダやマイクロン・テクノロジーとの協業で最先端DRAMプロセスの導入に成功。NAND型フラッシュメモリー技術はルネサス テクノロジ(現ルネサス エレクトロニクス)から導入した。
 一方、メモリー市況の悪化や大手メモリーメーカーの台頭などで厳しい経営状況が続き、2011年にファンドリーに転身すると発表した。同時にエルピーダとの共同出資によるレックスチップ・エレクトロニクスの出資分をマイクロンに売却した。その後、ファンドリー事業比率を高め、現状100%に達した。
 18年にはパワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリングと改名し、19年に台湾内の工場を含むすべての資産を移管した。20年に新興株式市場(Emerging Stock Board)に登録されたが、今年は上場復帰を目指す。

―― ファンドリー事業について。
 ファン ファンドリーは数多いが、ロジックとメモリーの双方の技術を有するのは当社のみだ。当社はこの強みを活かし、成熟プロセスによるミドルレンジ品に注力している。現在、自動車、5G、AIoTなどの需要が拡大しているが、ハイエンド品よりミドルレンジ品の需要が高い。例えば、4Gから5G、自動運転のレベル2から同2.5+に移行する際に顕著で、より多くのミドルレンジ品が必要となる。
 また、微細化で低コスト化を追求する「ムーアの法則」で設備投資額が莫大になり、設計企業が利益を享受する反面、材料メーカーはリスクを負い利益率が低かった。これに対し、我々は「逆ムーアの法則」を提唱し、不均衡なサプライチェーン構造を変えていきたい。上流から下流まで利益をシェアし、半導体産業の健全な持続を目指す。それを具現化するものの1つが、銅鑼科学園区で建設中の新工場だ。

―― 具体的な技術は。
 ファン ドライバーIC、パワーマネジメントIC(PMIC)、NAND型フラッシュ、CIS、スペシャリティーDRAM、ディスクリートなどだ。今後GaNデバイス、RFIC、NOR型フラッシュも導入していく。また、ロジックとメモリーを積層した独自のTSV「WOW」(Wafer On Wafer)を提供している。CISとバッファー用のメモリー、AIチップとスペシャリティーDRAMといった数々の組み合わせに対応する。

―― 生産体制は。
 ファン 12インチの「P1」「P2」「P3」、8インチの「8A」「8B」の計5拠点が稼働中だ。月産能力は12インチが10.3万枚、8インチが10.5万枚。デザインルールは12インチが180~21nm、8インチが180~110nm。生産品目は12インチがPMIC、DRAM、NAND型フラッシュ、ドライバーIC、8インチがPMIC、ドライバーIC、ディスクリートだ。
 銅鑼の新工場は23年から稼働を開始する。月産能力10万枚、デザインルール50~1Xnmに対応する。設備投資額は10年間で100億ドル規模となり、新竹市や苗栗市などで3000人規模の新規雇用を創出する。
 また、中国企業らとともに出資し、中国安徽省合肥市にICメーカー「ネックスチップ・セミコンダクター」を設立している。同社は12インチ、0.15μm~90nmに対応し、BOEグループ向けを中心にドライバーICを製造している。月産能力は4万枚規模だ。

―― 増産について。
 ファン 25年までに12インチのDRAM、NAND/NOR型フラッシュ、PMIC、8インチのディスクリートを増強する。これにより同年までに月産能力を12インチは14.5万枚、8インチは13万枚とする計画だ。

―― 売上実績は。
 ファン 20年度は15.5億ドルとなった。製品別売上比率はロジック56%、メモリー44%。一方、21年1~3月期は4.7億ドルと好調だった。通期では20億ドル規模で推移すると予測している。


(聞き手・東哲也記者)
(本紙2021年5月13日号1面 掲載)

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