イグス(ドイツ・ケルン、日本法人=東京都墨田区錦糸1-2-1、Tel.03-5819-2030)は、樹脂製機械部品の世界的なメーカーとして知られ、電子デバイス装置関連でも多様な製品群をラインアップしている。日本市場においても豊富な実績を誇り、先ごろ、日本法人設立から30周年を迎えた。同社の日本法人であるイグス(株)の代表取締役社長 北川邦彦氏に話を伺った。
―― 直近の需要動向について。
北川 2020年度(1~12月)は、イグスグループ全体では前年比で微増となった。新型コロナウイルスの拡大に伴い、経済が停滞した影響はあったが、人工呼吸器など医療関連での需要増に加え、自動車関連も年度後半から回復傾向がみられた。日本市場では医療関連や電子デバイス装置関連が堅調だったほか、低コスト多軸ロボットが食品工場向けなどで採用され、工作機械などの産業機械向けも20年後半から回復傾向がみられた。その勢いを継続するかたちで、21年は電子デバイス装置関連を中心に、幅広い分野で年初から好調に推移している。
―― 電子デバイス関連向けの製品について。
北川 低発塵のケーブル保護管「e-skin flat」の引き合いが好調に推移している。クリーンルームにも対応可能なフラットケーブルシステムで、特に半導体/FPD製造装置関連のお客様から高い評価をいただいている。3月には、「e-skin flat single pods」の販売も開始した。保護管内にケーブルを個別に挿入・収納できるケーブルチャンバーが特徴で、ケーブルの本数に応じてチャンバーの数を調整でき、メンテナンスやケーブルの交換が容易に行える。
―― そのほか需要が伸びている製品などは。
北川 軸受や可動部のケーブル、ケーブル保護管などにセンサーを搭載した「スマートプラスチック」の引き合いが好調に推移している。製品の摩耗量などをセンサーで測定し、最適な修理や交換のタイミングを通知でき、生産ラインのダウンタイム低減に貢献する。新型コロナの拡大によって製造現場内での行動が制限されるなか、スマートプラスチックであれば遠隔地から部品の状態をリモートで監視できる。
―― 開発面での取り組みについて。
北川 当社では、毎年130~150種類の新製品を開発しており、20年も約150種の新製品を投入した。21年も様々な製品を市場投入する予定で、その1つとして「モジュラー式ギアボックスキット」を今春から本格的に出荷する。モーターコントローラー内蔵の樹脂製波動歯車に、力制御システム、アブソリュートエンコーダー、モーターなどを一体化したもので、ロボットアームなどの自動化ツールを開発する際の設計・製造コストを削減できる。波動歯車は当社独自の高機能樹脂素材を使用することで優れた耐摩耗性を備えており、軽量かつコンパクトな設計と高い費用対効果を実現できる。当社では、簡易な多軸ロボットをカスタム販売する事業も行っており、モジュラー式ギアボックスキットを本格搭載した多軸ロボットも投入していく予定だ。
―― 販売面での施策は。
北川 オンラインでの販売活動に力を入れている。イグスグループは現在、ドイツ本社のほか35カ国に支社を展開しているが、そのなかでバーチャル展示会を初めて開催したのが実は日本であり、ウェブ上での注文、設計支援、納期確認、寿命予測計算ツールなども提供している。最近は日本からドイツ本社の実機展示会場へのリモートツアーなども行っており、オンラインでも様々なかたちでお客様をサポートできる体制を整備している。
―― 今後の日本法人での展開について。
北川 イグスグループが日本法人を設立したのが1990年12月で、先ごろ日本法人設立から30周年を迎えた。これまでに様々な方から多大なご支援をいただくなかで、当社としてもご協力できることが年々増えてきている。お客様のサポート体制をこれまで以上に充実させるとともに、低コスト、低摩耗、メンテナンスフリーといった当社の強みを、幅広いお客様にしっかりと提案していくことで、今後もお客様の生産コスト低減に貢献できるような取り組みを進めていきたい。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2021年4月1日号8面 掲載)