筆者は大の銭湯好きである。それも普通ではない。天然温泉の銭湯でなければイヤなのだ。それゆえに、市内の銭湯六十数カ所がすべて天然温泉、という鹿児島市は垂涎の場所なのだ。実は筆者が生まれて育った横浜市内にも「黒湯」という多くの天然温泉の銭湯が存在する。東京でいえば大田区蒲田から池上ゾーンは黒湯の宝庫である。
そぞろのままに散歩歩きをして銭湯に入るというのは無上の喜びだ。天然温泉でなければイヤだ、といったけれど、人為的に作られたマイクロバブル炭酸泉であれば文句はない。マイクロバブル炭酸泉は毛穴の奥深くまで入り込み、体のすべての汚れを取ってしまう。おまけに保温効果も抜群であり、乳白色の温泉に浸かっているような気分にもなる。これが嬉しい。
さて、ナノ&マイクロバブル技術を用いて画期的なマイクロバブル炭酸泉を提供するのが(株)オプトクリエーション(横浜市港北区篠原町3014-2、加祥ビル4F-C、Tel.045-439-3012)というカンパニーである。同社は2002年11月に設立され、資本金はすでに4億362万円に達している。代表取締役を務める飯田準一氏は横浜・二俣川に生まれ、日本大学経済学部を出て、まずはNKKグループのプラント営業に従事する。その後、行政書士の資格を取り、様々なクライアントと知り合うなかで、このナノ&マイクロバブル技術に出会ったのだ。
オプトクリエーションが提供するナノ&マイクロバブル応用のテクノロジーは、マイクロバブル炭酸泉にとどまらない。最近ではマイクロバブル遊離型オゾン水を用いて、湿式ではほぼ不可能であった半導体ウエハーの洗浄に成功している。原理的には、エッジング処理で残ったレジストを剥離および除去させる技術。この洗浄技術においては、驚くなかれ、薬品はまったくいらない。廃水処理も不要だ。もっと言えば、洗浄処理時間そのものが世界最短を達成している。現状では最終実証実験に入っており、いよいよテークオフの時を迎えようとしている。
また、マイクロバブル持続型オゾン水「NAnO3」の開発も完了した。オゾンガスが抜けない世界初のオゾン水で、5月に全米歯科矯正学会で発表され、11月にはインプラント殺菌の分野で、世界発表をタイ・プーケットで行う。
「通常で言うマイクロバブル水に対し、当社のナノバブル技術は通常の1000分の1という細かさだ。つまりは100nm以下という微細なものだ。このナノバブル技術を使い、ナノバブル水素水の製造・販売をしている」(飯田代表)
このナノバブル水素水を医療に応用すると、どういうことになるのか。神奈川県の相模原中央病院で臨床実験に入ったところ、とんでもない成果が確認された。つまりは、沖縄のモズク、韓国のカゴメ昆布を同社のナノバブル水素水とミックスさせた水を作り、これを手術できない末期ガンの患者に飲ませたのだ。7人がこれを飲み、1人は亡くなったが、6人はガンがすべて完治してしまった。相模原中央病院の院長はこれに驚き、本格的な臨床に着手している。慶応大学医学部もまたこの驚くべき成果に動かされ、臨床に取り組むことを決めた。
オプトクリエーションのサプライズ技術は、いよいよ本格的に株式市場を動かしていくだろう。2013年にはTPMに上場を予定し、2014年には第2ステージのナスダック上場を計画している。ただ、同社はあくまでも研究開発型のイノベーション企業であり、ファブレスを貫いていく方針だ。世の中にない技術や事業を生み出し、事業ごとに1000億円以上の市場構築を目指していくという。
「医療向けの独自のナノバブル水素水は、ガン治療に革命的な成果をもたらす可能性が高い。パーキンソン病などをはじめとする生活習慣病にも効果があるとの評価も多い。半導体ウエハー洗浄の新技術は、液晶ディスプレーやソーラーパネルにも応用できると考えている。こうなれば、世界全エリアに当社の技術を展開していきたい。世の中にあるものは決してやらない。世界初にこだわり、あくまでもオンリーワン技術で勝負していく」(飯田代表)
筆者も横浜生まれの横浜育ちであるが、横浜・二俣川で生まれた飯田準一という男が作った気鋭のベンチャーが、世界のすべての国に通用するサプライズ技術で羽ばたく日を心から祈っている。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。