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杏林大学病院、新設脳卒中Cやヘリポート併設の新第三病棟370床開設


齋藤英昭副院長「樹木が見える眺望は在院日数が短く、鎮痛剤が少ない」

2013/5/7

新病棟について説明する甲能直幸病院長(左)と齋藤英昭副院長
新病棟について説明する甲能直幸病院長(左)と齋藤英昭副院長
 杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市新川6-20-2、Tel.0422-47-5511)は、老朽化した旧第三病棟(1973年竣工、地下2階地上5階建て)を解体し、これに替わる新病棟として跡地に「第三病棟」を開設した。規模は、RC一部S造り地下1階地上10階塔屋2階建て延べ約2万2000m²。建物には免震構造を採用し、屋上にヘリポートも備えている。主に内科系の診療科が集約されているが、隣接する外科病棟と各階が連絡廊下でつながっており、スムーズな連携が取れるようになっている。病棟は10月4日に稼働した。第三病棟に病床を移設した第二病棟については、改修工事を行い新たな医療機能や病院管理機能などに活用する。
 同病院は、東京西部地区三多摩エリアにおける中核医療センターとして、急性期医療の役割を担っている。病床数は1153床で、病床稼働率は92%。医師609人、看護師1315人、その他383人の計2307人もの職員が勤める。年間3万8000人の救急患者を受け入れており、全手術のうち、救急手術数の比率は16.2%と高い。患者比率は三鷹市、調布市など近隣22市区で全体の9割を占める。新第三病棟は、こうした地域医療における中心的役割を果たすうえで、不可欠な医療機能を強化、補完するものである。
開設した新第三病棟
開設した新第三病棟
 第三病棟は、11年1月に着工し、建物は12年8月15日に竣工した。入院患者の心が落ち着く病棟を目指しており、コンセプトイメージとして「森の病院」を掲げている。日射の遮光や採光、通風に十分配慮したつくりとしたほか、周囲に武蔵野の面影を残す建物南側のケヤキやイチョウを保全。また、外科病棟との間にある中庭や、9階には屋上庭園を整備した。齋藤英昭副院長によると、病室の窓からの眺めと術後経過について、樹木が見える眺望と建物の壁が見える眺望とで比べ、前者の在院日数が短く、鎮痛剤投与量が少なくて済むという研究発表もあるという。
 建築コンセプトは、(1)隣接する外科病棟と一体化する、(2)免震構造を採用、(3)環境配慮型病院とする(1.武蔵野の森に囲まれた立地条件の活用、2.日本の気候風土に即した計画)、(4)将来の個室化への可変性確保、の4点。
 病棟内には、病床370床を配置した。各フロア構成は、1階が救急系・内科系HCU(全個室24室)、2階が耳鼻科、腎臓内科、リウマチ膠原病内科、3階が血液内科(12月より無菌治療室12床が稼働)、4階が脳卒中病棟とSCU、5階は消化器内科、糖尿病・内分泌・代謝内科、神経内科、6階が呼吸器内科、7階は消化器内科、腫瘍内科、8階が皮膚科、高齢診療科、9~10階が個室病棟となっている。屋上のヘリポートは全幅24.35m×全長26.05m、衝撃加重35.75tで、東京消防庁航空隊の大型ヘリコプターや、中型機の離発着を可能としている。また、地下1階は電気室、機械室と、病院全体の物流ルートとした。
 HCUは、プライバシーに配慮して全室、モニター完備の個室とした。気圧を低くした陰圧室を4室、陰陽圧室4室を設けて、院内感染の防止に努めている。全24床のうち、4室は透析設備を備えている。HCUでは、ICUと病棟の中間にあたる重症度の患者を集中ケアするほか、感染症病棟の役割も担う。また、1、2次救急外来からの入院について、特に夜間緊急入院の場合に患者の安全を考慮し、患者4対看護師1と看護体制の厚いHCUで受け入れる方針だ。
 新設の脳卒中診療部門では、(1)搬入3時間以内に病型を確定診断、(2)CT、MRI/A、頚部echo、経頭蓋dopplerが24時間可能、(3)tPA症例、カテーテル治療への即応(SCU設置)、(4)専門のMSWが入院時から関与、(5)超早期リハビリの実施、などに努める方針。脳卒中センターは、一般病棟30床と、SCU(脳卒中ケアユニット)9床を配備。また、脳卒中超急性期のリハビリテーションや、摂食嚥下療法などにすぐ対応できるように、専用のリハビリテーション室を設けた。脳卒中センターでは神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科の3部門が診療科の壁を越えて専門的治療を行うとともに、医師、看護師、リハビリテーション技士、医療福祉相談員などが、それぞれ専門的見地から包括的に1人の患者の治療に携わる。同病院の脳卒中センターは開設から6年半が経過。これまでに約3600例、年間平均約600例の診療を行ってきた。
 同病院ではこれまで、03~04年に病院情報システム、03~05年に手術部・ICU棟建設、04~05年に物流システム、05年に経営システム、06年に外科病棟・S-ICU建設、06~12年に新病棟建設・旧棟再開発と、段階的に病院の再整備を進めてきた。
 病棟が新しいほど看護師の離職率が低下するとのデータもあり、同病院では看護師の定着率向上にも期待している。09年時のデータによると、病棟別看護師離職率は、外科病棟(07年開設)が10%、中央病棟(05年)が9.4%、第1病棟(00年)が10.8%なのに対し、第2病棟(1985年)は16.6%、旧第3病棟(73年)は19%と大きな開きがあった。また、医療従事者の満足度と患者の満足度が比例するとの統計もあるという。
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