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第27回

アイリスオーヤマ 富士小山工場、飲料水事業本格生産開始、30億円の追加投資決定


2021/3/9

 アイリスオーヤマ(株)(仙台市青葉区五橋2-12-1、Tel.022-221-3400)は、富士小山工場(静岡県駿東郡小山町桑木221-1)の一部を改修し、飲料水事業に参入した。2月18日付で天然水と強炭酸水の本格生産を開始し、順次出荷していく。また、30億円を追加投資し、今回稼働したラインと同規模のラインを増設し、10月をめどに稼働させることを決定した。

富士小山工場
富士小山工場
 富士小山工場は、富士山の裾野にあたる静岡県小山町に同社の6場目の工場として1997年に竣工。敷地面積は2万2890m²、工場延べ床面積は3万1259m²で、1万8307パレットの自動倉庫を備えている。以前はプラスチック製の収納用品や園芸用品の生産を行っていたが3年前にこれらの製品の生産を他工場に集約しており、主に倉庫として活用していた。

 今回の飲料水事業参入は、今後想定される首都直下型地震、南海トラフ地震といった大規模災害発生の際に、被災各地に生命と衛生環境維持に必要不可欠な飲料水を供給する体制を構築することが目的。

 同社は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災企業となったが、地震発生後1週間以内に工場を復旧。当時運営していたホームセンターは翌日から営業し、震災後のインフラの復旧に向け同年4月からLED照明を大増産している。この際インフラのストップ、特に断水に対するライフライン復旧までの備えと迅速な対応の重要性を認識したという。

 富士小山工場は、地下水が豊富だったため、水の生産に向いていると判断し、今回新たに井戸を掘削した。約30億円を投資し、採水、濾過、クリーンルーム内でのPETボトルへの充填、ラベル貼り付け、賞味期限の印字、箱詰めから出荷までの一連の自動化ラインを構築。ラインの長さは250mにも上る。天然水に加え、炭酸水も生産しており、生産能力は天然水が1ケース500mL×24本換算で1時間当たり750ケース、炭酸水が同650ケースとなっている。同社は長年プラスチック加工製品を取り扱っていることから、PETボトルの製造にもノウハウがあり、PETボトルの製造から一貫して対応できることに強みを有している。今回のライン導入に伴い15人を新規雇用している。

 富士小山工場は、その位置から緊急時には迅速に関東圏への配送が可能。さらに、埼玉工場(埼玉県深谷市畠山字天神沢1500)、つくば工場(茨城県稲敷郡阿見町大字星の里26-2)にも備蓄することで、首都圏に向けたセーフティーネットワークを構築できる。

 さらに、2月13日に発生した福島県沖地震による各地での断水の発生を受け、富士小山工場での約30億円の追加投資を決定した。同地震では一部地域では広範囲の断水が発生し、同社では仕入れていた他社製品の水を配送することで対応したが、同規模の地震が首都圏で発生した場合などに備えて増強する。追加投資額は約30億円で今回稼働したラインと同等の1時間当たり天然水750ケース、炭酸水650ケースのラインを導入する。10月の稼働を予定しており、10人を追加雇用する計画。また、市況を見てさらなる追加投資も検討している。工場の建屋には余裕があるため、当面は拡張しなくても対応できる。

天然水生産ライン'
天然水生産ライン
 富士小山工場で生産される天然水は、富士山の何層もの玄武岩層に磨かれて、すっきりと飲みやすいのが特徴。現状、500mLと1Lの天然水と500mLの炭酸水がラインアップされているが、他の容量やフレーバー水などの事業も検討していく。同社が強みを持つホームセンターやインターネットサイトを中心に販売していくが、スーパーマーケットやドラッグストアなどの販路拡大も実施し、初年度50億円、25年度300億円の売り上げを目指す。

代表取締役社長 大山晃弘氏
代表取締役社長 大山晃弘氏
 今回の飲料水事業参入にあたり、同社代表取締役社長の大山晃弘氏は「日本が災害に強い国になれるように貢献していきたい。飲料水事業を通じ社会課題解決に貢献して、成長していきたい」とコメントしている。

 
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