商業施設新聞
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No.794

破滅的な終末論に惑わされるな


山田高裕

2021/2/16

 いきなり商業施設と直接は関係がない話で恐縮だが、先日任天堂の第3四半期決算が発表された。結果は売上高が1兆4044億円で前年同期比37.3%増、営業利益はなんと前年同期比98.2%増の5211億円ということになった。ゲーム業界ではトップを走ってきた任天堂だが、ここにきて過去最高の業績を達成する見通しが濃厚だ。理由は言うまでもなくコロナ禍によるゲームソフト・ハードの売上高の伸長で、今期はソフトは「あつまれ どうぶつの森」など大ヒットを連発、Nintendo Switch本体も2410万台を売り上げている。

 このように絶好調の任天堂だが、ほんの少し前までは今後の見通しが不安視されていた。それはIT企業大手によるクラウドゲームサービスへの参入だ。19年11月にはGoogleが「Google Stadia」を発表し、ブラウザがあればハードウェアの性能などは関係なくゲームがプレイできるサービスとして注目された。そしてこれが最も脅威になるとして捉えられたのは、任天堂などの既存のゲームハードメーカーだった。クラウドゲームが一般化した暁には、ゲームハードはすべて不要になり、任天堂はプラットフォーマーとしての価値を失い、ソフトを供給するだけの企業に転落する。そういった見通しが語られていたものだった。さらにAmazonまでクラウドゲーム市場に参入すると発表されたことにより、任天堂の業績が非常に好調だった20年春ごろの段階でも、これは既存ゲームハードメーカーの最後の輝きに過ぎない、いずれクラウドゲームがとって代わることは明白だという論評が目立ったものだった。

2410万台を売り上げたNintendo Switch
2410万台を売り上げたNintendo Switch
 では現状はどうなっているか。任天堂が過去最高の業績を達成し、営業利益は前年の2倍もありうるという見込みはすでに述べたとおりだ。Google Stadiaはどうか。一言で言えば失敗だ。国内ではまだサービスが始まっていないので当然だが、海外での評判も芳しいものではない。その理由は技術的問題やコンテンツ不足など様々だが、いずれにしろ当初予想されるような状況にはなっていない。Googleも先日Stadia専用ゲーム開発スタジオを閉鎖しており、サービス自体の行く先に暗雲が立ち込めている。

 これらの話から、「〇〇は時代の流れで淘汰される」「〇〇は××に取って代わられる」という刺激的・終末論的な話は、案外あてにならないことが多いということが見て取れる。何をいまさら当たり前のことを言っているのだと思うかもしれないが、こうした言説は世の中が大きくうねっているときに数多く現れ、そしてよく参照される。コロナ禍における「これからは飲食・宿泊などの業界はもう未来がない」などの言説もそれだ。現状、飲食や宿泊、アパレルなどの小売りが極めて厳しい状況にあるのは厳然たる事実だ。だがこうした現在の状況から、長期的な見通しというものの意味を考えずに、ただただ終末論的な見通しを語れば「先を見通している」のだと勘違いしたような言説がしばしば目につく。こうした終末論者は、時期はともかくコロナ禍がいずれは収束すること、そしてある程度の所得を手にした人間の消費行動というものは不変だということを無視している。歴史的には近代に入ってからに限定したとしても、全世界で5000万人が死んだといわれるスペイン風邪や、100万人以上が死んだといわれるアジア風邪、50万人が死んだといわれた香港風邪の後も人々の消費行動と国際的な行き来は拡大の一途を辿った。明けない夜はないということを前提とし、コロナ禍の下でどう生き延び、やり過ごしていくか、そして収束後にどのような反転攻勢を展開するかということをはっきりと計画していきたい。
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