(株)東急モールズデベロップメントが運営する東京・南町田の商業施設「グランベリーパーク」は、11月13日で開業1周年を迎えた。鶴間公園と一体的に開発された施設であり、飲食店でテイクアウトした商品を持って、公園でピクニックを楽しむなどリアルならではの楽しみに溢れている。開業からこれまでの動向を同社グランベリーパーク総支配人の青木太郎氏に聞いた。
―― 開業1周年を迎えました。施設の概況は。
青木 コロナ禍ということもあり傾向を捉えにくいが、商圏は想定通りの20km圏内が中心。客層はファミリー層が核になると思っていたが、実際は20~60代までの世代が均等に訪れている。食、アウトレット、エンターテインメント、公園など様々な要素があるためだと思う。
―― 食が集積したギャザリングマーケットの賑わいが特に目立ちます。
青木 水槽がある鮮魚専門店などライブ感がある売り場を評価いただいている。平日は地域住民、休日は広域から来た方も多く利用されている。スイーツや総菜などもあり、今はバームクーヘン専門店の「治一郎」がポップアップ出店しており、好調に推移している。本来は都心で出店することが多いブランドだが、コロナ禍で都心に行きにくい人も多く、販路を広げる意味もあって出店していただいた。
―― 公園との融合が話題になりました。
公園と一体化したことで多くの人を集客する
「グランベリーパーク」
青木 やはり公園と商業を両方使う方が非常に多い。飲食店がテイクアウトに力入れており、公園でシートを引いて、ピクニック用にテイクアウトした商品を食べるのが当たり前の風景になっている。スノーピークはテイクアウトボックスを買うとテーブルや椅子を貸し出すなど、公園と融合している場所ならではの取り組みをしている。開発時からいかに公園と融合するかを相当意識し、商業施設と公園で同じ環境デザイナーを起用したり、公園に自生している木々を商業施設エリアに移植するなどした。こうした工夫もあって1つのエリアとして使っていただけているのだと思う。
―― 商業施設にも体験的要素が多いですね。
青木 アミューズメント施設が充実しているし、シアタープラザ前では炎が噴き出るショーを毎日行い、「モンベル」の店舗に併設するボルダリングウォールもアトラクションと言える。スケートリンクを昨冬に続いて整備するなど、商業施設自体も体験ができるようにしている。公園と商業施設の間のエリアには「スヌーピーミュージアム」もあるし、公園を含む街区「南町田グランベリーパーク」で「遊びに行く場所」としての魅力を打ち出している。
―― グランベリーモールを再整備した施設ですが、旧施設からの変化は。
施設内には木々や緑が多く、
歩くのが楽しい空間になっている
青木 グランベリーモール時代と比べて連休の集客が明らかに強くなった。コロナ禍で遠出ができないこともあるのだろうが、9月の4連休も非常にお客様が多かった。これは「せっかくの休みなんだからグランベリーパークへ行こうよ!」と、出かける先に選ばれるようになったということ。グランベリーパークは緑に溢れ、丹沢の山々、富士山など写真を撮りたくなるようなスポットが多く、非日常感がある。この非日常感は駅から始まっている。駅自体を再整備して、滝や映像があるわくわく感を創出した。街づくりとして駅ごと変えたのは日本中探してもなかなかないし、鉄道会社を持つグループならではの取り組みだろう。
―― コロナ禍において郊外は回復が早いとの指摘がありますが。
青木 テナントや都心の施設の話を聞くと戻りが早いようだ。アウトレットや、食物販などの業績も堅調になりつつあり、9月の連休からは飲食も含めて戻ってきた。もともと公園と融合した施設なので、飲食店は会社帰りの飲み会などでなく、昼を中心とした需要だった。それで戻りが早いのかもしれない。
―― 今後、郊外に人が増えれば、こちらの施設にとってはチャンスですね。
青木 グランベリーパークはいずれライフスタイルが多様化して郊外で遊ぶ、買い物する、働く時代が来ることを想定して開発された施設。そのため施設内にはコワーキング施設もあってかなり盛況。ここまで一気に時代が進むとは思っていなかったが、次世代を見据えて作った施設なので、今後も時代の変化に対応していきたい。
―― 改めてグランベリーパークの魅力とは。
青木 運営効率だけ考えると、インモールの方が良い面はある。しかしグランベリーパークはアウトモールとして様々な植物とともに四季を感じられ、公園とも一体化しているためピクニックや、芝生で寝転んだりできる。こうした楽しさはリアルならでは。開業時は我々が驚くほど多くの人に足を運んでいただき、開業から1年で1200万人を超えるお客さまにご来館いただいた。今は体験や外で遊ぶ価値がいっそう高まっている。今後もこうしたリアルの魅力や価値を発信していきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2375号(2020年12月15日)(2面)