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第408回

(株)SUMCO 代表取締役会長兼CEO 橋本眞幸氏


高難度の先端EPWで勝負
200mm「車載中心に急回復」
ロジック中心に21年も成長

2021/1/15

(株)SUMCO 代表取締役会長兼CEO 橋本眞幸氏
 シリコンウエハー業界にとっても、2020年は予想外の展開が続く一年となった。新型コロナの影響で自動車市場を中心に需要が低下する一方、テレワーク/在宅勤務、巣ごもり需要が広がったことで、パソコンやタブレットなどの通信機器やクラウド関連がウエハー需要を牽引。業界団体SEMIの統計によれば、20年のシリコンウエハー出荷面積は前年比2%増、21年は18年実績を上回って過去最高を記録する見通しだ。足元のシリコンウエハー市場、ならびに事業戦略について、大手の一角を担う(株)SUMCOの橋本眞幸代表取締役会長兼CEOに話を聞いた。

―― まずは、足元の20年を振り返って。
 橋本 シリコンサイクルに則れば、20年は良い年になるはずであったが、新型コロナが世界で猛威をふるったことで、予想と全く異なる展開となった。最終製品を見ても、スマートフォン(スマホ)の販売が低迷し、自動車や民生市場も厳しかった。ただ、リモートワークの進展などでパソコンやタブレット、サーバー分野は非常に好調で、ウエハー需要を牽引してくれた。主力の300mmウエハーも先端ロジック向けを中心に需要が強かった。

―― 先端ロジック向けのエピタキシャルウエハー(EPW)が強みです。
 橋本 EPWでは大手半導体メーカー向けで、いずれもトップシェアを獲得しており、先端ロジック向けEPWではナンバー1サプライヤーと自負している。20年はメモリー向けが主力のポリッシュドウエハー(PW)において一時的に需要が低下したが、ロジック向けEPWは足元でもフル生産が続いており、当社だけでなく同業他社もエピ炉はどこもいっぱいの状況ではないか。エピ炉は納期が1年以上かかるため、能力増強の意思決定から寄与まで時間がかかる。

―― ただ、直近の業績は利益率が悪化しています。要因は。
 橋本 先端ロジック顧客向けのEPWの立ち上げが非常に急峻だったこともあり、歩留まりの安定化に時間を要した。また、9月にあった台風の影響で、当社の九州地区工場の生産活動に支障が出たことも利益を押し下げた。足元で最先端品の生産は正常化しつつあり、21年以降、利益率は改善してくるはずだ。
 また、16年から始まった300mmウエハーの値戻しにおいて、PWの方が価格の上昇率が高く、EPWが主体の当社はそれを広く享受することができなかった。ただ、我々は今後も技術難易度が最も高い先端のEPWで勝負していく姿勢に変わりはない。目先の利益を優先すれば、先端品をやらない方がいいかもしれないが、それは将来の成長がなくなるわけでもあり、多少無理してでも先端品を主軸に事業を展開していくつもりだ。

―― 収益改善の手立ては。
 橋本 何か劇的に変わるようなことはなく、やらなければならないことを着実に積み上げていくことが重要だ。具体的な取り組みとしては、20年からAI推進本部という組織を新設して、生産工程の見直しを進めている。特にウエハーの評価・検査工程は人手含めて、依然としてアナログ要素が多く、ここを自動化することなどで生産性を高めていきたい。

―― 200mmウエハーの需給環境は。
 橋本 コロナの影響を受けて厳しい状況が続いていたが、足元では車載分野を中心に受注が急回復している。受注量でいえば、足元はボトムの時に比べて2~3割アップしている。急激な需要増に対して、我々も人員配置の見直しなどによって増産対応を図っているところだ。ただ、200mmウエハーすべてが回復しているわけではなく、民生や産業用途は引き続き低調だ。IGBTのような車載用半導体向けの需要が極端に良くなっている印象だ。

―― 長期供給契約の状況について。
 橋本 当社の場合、単体で9割以上が長期契約で埋められており、台湾子会社のFST(Formosa SUMCO Technology)がスポット契約主体で運営している。全社ベースでみても、8割以上が長期契約となっている。21年の長期契約分はすでに埋まっている。値戻しを含めた今後の長期契約の更新や改定について詳しくは申し上げられないが、一口に長期契約といっても様々な形態があり、今後はより多様化していくのではないかと考えている。

―― 能力増強に対する考え方は。
 橋本 市況が良いから、すぐに投資を行うわけではない。需給を見ながらコンスタントに行っていくのが理想だ。ただ事業を展開するうえで、シェア3割はキープしておきたいという方針もあり、事業規模を維持するための投資は行っていくことになるだろう。ただ、PWは増やすつもりはない。差別化が難しく、当社は今後も付加価値を打ち出せるEPWを主軸に据えていく。

―― 業界3位のグローバルウェーハズが4位のシルトロニックを買収します。業界に与える影響は。
 橋本 過去、ウエハーサプライヤーは10社以上がひしめき合っており、当社も国内3社が統合して誕生した会社だ。プレーヤーの数が少なくなるのは、需給面ではポジティブに働くと見ており、業界の健全化につながるだろう。

―― 中国市場は。
 橋本 中国現地の新興メモリーメーカーなどが台頭してきており、積極的な設備投資を実施しているが、ウエハーの購入量という意味では決してまだ多くない。現地のウエハーサプライヤーも存在しているが、モニターウエハーの取引が中心で、プライム相当でビジネスを展開している印象はあまりない。

―― 最後に21年のウエハー需要の見通しについてお聞かせ下さい。
 橋本 300mmはテレワークおよび5Gの浸透で、スマホ・データセンターを主体として、今後もロジックを中心に安定した成長が見込めそうだ。200mm以下はマクロ景気と連動して落ち込んだが、今後は車載を筆頭に本格的な需要回復が期待できるとみている。


(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2021年1月14日号1面 掲載)

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