商業施設新聞
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No.788

再考察 アフターコロナの街づくり


高橋直也

2021/1/5

 本紙2020年5月26号で「アフターコロナ 変わる街づくり・商業施設」と題して、アフターコロナの商業施設や街づくりを予想した。まだまだコロナ禍は収束の様相を見せないが、海外ではワクチン接種が始まった。事態が好転していくのだと思いたいし、収束すれば本当の意味でアフターコロナが始まる。5月26号時点とは少しずつ状況も変わり、見えてきたこともある。改めてアフターコロナの商業施設や街づくりを考えてみる。

 5月26号当時でも紙面で述べたが、「郊外」に人が集まりやすくなるという方向は続きそうだ。コロナ禍のように意識的に人混み=都市部を避けることはなくなるものの、在宅ワークはある程度定着しそうだ。そうなると「通勤帰りにちょっと駅ビル、駅前の商業施設で買い物を」という機会は減る。一方で、筆者個人として緊急事態宣言中に何度か耳にした「意外とリモートワークで仕事ができる」という言葉はすごく本質を捉えていると感じる。つまり、あくまで『意外と』であって、『何の不自由もなく』ということではない。リモートワークにより、企画やものを生み出すためにはコミュニケーションや雑談が重要であることを再認識したという声も多い。そういう意味では、オフィス不要論など極端な意見も出ているが、疑問符が付く。また、オフィスの空きは都心ど真ん中の高層ビルからでなく、その周辺にある小規模で老朽化が進んだようなビルから発生することが考えられる。そうなると都心の一等地の空洞化は直近では考えにくい。

 ただ、都心一等地であってもオフィス賃料の下降やリーシング競争の激化は起きるかもしれない。そうなるとオフィスリーシングを勝ち抜くためにもビル全体の魅力づくりが必要になる。それは例えば低層に魅力的な商業空間があること、賑わいを生む緑や水辺の空間が敷地内にあることなどだろう。

 そう考えると、六本木はある意味最先端の街だ。「東京ミッドタウン」「六本木ヒルズ」という大型オフィスを備えた複合施設があるが、以前の六本木は決してオフィスエリアではなかったし、「ITなら渋谷」のような特定の業種が集まる街でもない。交通アクセスも特別良いわけではない。しかし、高級ホテル、上質な商業施設、広いガーデン、アートがある広場など施設そのものの力で六本木に人やオフィステナントを呼び寄せた。アフターコロナの都心では、オフィスリーシングのためにもこうしたより魅力的な賑わい、商業空間がより求められていくのではないか。

「グランベリーパーク」は時代の最先端を行った(写真は開業時のもの)
「グランベリーパーク」は時代の最先端を行った(写真は開業時のもの)
 一方で、そうは言っても郊外で働く人も増えるだろう。その中でも商業施設が働く場になる機会が増えそうだ。現在も本紙で郊外の商業施設の取材をしているが、多くの事業者が「働く場をつくりたい」と話す。もともと郊外のサテライトオフィスが増えれば通勤時間が減り、ライフワークバランスを改善できるし、将来的にはそういう時代が来るのでは、という声があった。ただ、どうしても注目されるのは駅前や都市型商業施設。あくまで概して、という話になるが、ここ数年に完成した商業施設では郊外型より都市型施設の方が、業績は堅調だったように思える。ライフワークバランスを重視し、郊外に振り切った街づくりはなかなか進まなかった。

 そういう意味では東京・南町田の「グランベリーパーク」は時代の最先端を行った。郊外であり、コワーキングスペースもあり、公園と隣接することで商業施設自体の価値も上がっている。足をわざわざ運ぶ意味を創出した。ちなみに同じ公園+商業施設として話題になった「MIYASHITA PARK」もシェアオフィスを併設している。そう考えると、「仕事は仕事場(=オフィス街にあるオフィスビル)で」など生活の区分けが、あいまいになっていくのかもしれない。

 21年も様々な商業施設がオープンする。注目している施設も多いが、いずれもコロナ前に企画され、開発がスタートしたものだろう。企画段階からアフターコロナを踏まえた施設が開業するのは数年後になるはずだ。アフターコロナを一から踏まえた最先端の次世代型施設は、果たしてどのようなものになるのだろうか。
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