電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第414回

九州シリコンアイランドの進出第1号は三菱電機熊本工場であった


地球環境保全に貢献するパワーデバイスの拡大に全力投球

2020/12/25

 1967(昭和42)年は、いざなぎ景気による経済成長が続いていた年である。日本の国民総生産が世界第3位に躍進したメモリアルイヤーでもある。「昭和元禄」に酔いしれた若者たちは髪の毛を肩まで伸ばし、米国のヒッピー族を真似たが、このころは長髪と言われ、現在のロン毛とは異なる。新宿を中心に家に帰らないフーテン族が出現し、これはのちに渥美清扮する「フーテンの寅」の原型となった。イギリスのファッションモデルのツイッギーの来日を頂点に、空前のミニスカブームが到来した。

 「昭和元禄」に酔いしれていた国民は大量消費時代を迎え、カラーテレビ、クーラー、自動車などの民生品などを買い求める動きが加速し、いわゆる民生ブームが到来する。NHKテレビの受信契約数は2000万を突破し、ほぼ各世帯にテレビがいきわたるという状況になった。また、シャープはMOS ICを搭載した世界初の電卓を発表し、国内外を驚かせた。IC時代の到来を本格的に思わせる出来事であった。

 このころ、三菱電機はICの旺盛な需要を背景に、主力の北伊丹製作所を補完するかたちで、IC組立専門工場を九州の熊本市に建設する。熊本への立地は北伊丹で働いていた多くの人が熊本出身者であったことも1つの理由だった。その後、九州には各半導体名メーカーが進出し、シリコンアイランドと呼ばれるようになるが、その先鞭をつけたのが三菱電機の熊本工場といえる。

 「現在の熊本工場は、パワーデバイスの一大量産拠点である。熊本、福岡、兵庫の3カ所で、お家芸ともいうべきIGBTを作っている。2015年には、三菱電機のパワーデバイスは累計出荷高1兆円を突破した」

環境にやさしい三菱電機パワーデバイス製作所(福岡)
環境にやさしい三菱電機パワーデバイス製作所(福岡)
 こう語るのは、三菱電機パワーデバイス製作所にあって所長の大任を務める安田幸央氏である。安田氏によれば、パワーデバイスは、超高速で動くスイッチであり、電力量を自由に制御できる。すなわち電力消費を節減できるエコデバイスであり、地球環境に貢献する製品であるという。

 「三菱電機のパワーデバイス製作所は生物多様性に配慮した地域との共生に取り組む。福岡工場の構内には小川環境を好む魚、エビ、トンボなどの昆虫がたくさん暮らしている。カササギ、コサギ、イソヒヨドリなどの鳥も生息している。なんと植物284種類、動物243種類、合計527種類の生き物を確認している。また、熊本工場構内では、植物314種類、動物267種類、合計581種類の生き物を確認することが出来た。こうした生き物たちと共生していくモノづくりを今後も続けていく」(安田所長)

 福岡にあるパワーデバイス・イノベーションセンターは2014年3月に立ち上がったが、「グローバル環境先進企業」を目指して、パワーエレクトロニクス技術の発展に取り組む三菱電機の姿を体現する施設である。国際戦略総合特区の法人指定を受け、制度を活用して新技術・新製品の開発を加速している。もちろん、持続的成長に向けて、環境性能の確保には全力を挙げている。太陽光発電、LED照明を採用し、自然採光、屋上緑化、自然換気、さらには再生水の利用などを実施している。省エネ効果は、年間560MWh削減に成功している。

 「ありがたいことに当社は、中国のエアコン向けではトップシェアを持ち、新幹線の採用実績も多い。今後は、EVやハイブリッド車、燃料電池車などのエコカー向けのパワー半導体モジュールの開発・量産に力を入れる。SiCという新材料の採用、大口径ウエハーの採用などにも注力する。パワーデバイスは地球環境保全に貢献し、あらゆる分野に不可欠なキーデバイスである。三菱電機の伝統的な企業姿勢にも合致しており、今後も量産拡大に向けて全力投球の構えだ」(安田所長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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