電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第405回

長瀬産業(株) 執行役員 奥村孝弘氏


5/6G対応部材・技術開発に注力
相乗効果で売上高1000億円目指す

2020/12/18

長瀬産業(株) 執行役員 奥村孝弘氏
 長瀬産業(株)(東京都中央区日本橋小舟町5-1、Tel.03-3665-3021)は、5G/6Gを見据えた高周波対応部材・モジュール市場の拡大を見込み、グループでの関連事業のグローバル展開を加速する。同社は、コア事業になる有力ベンチャーの米3D Glass Solutions(3DGS)やフィンランドのInkron(インクロン)に出資や買収を相次いで決めるなど、攻勢に出ている。5G関連部材・技術を軸に新規事業を束ねる同社執行役員の奥村孝弘氏に、今後の事業戦略やビジネス展望を聞いた。

―― 5G/6Gに向けた取り組みを強化中です。
 奥村 2016年ごろから5Gの事業開発に着手した。IoTや人工知能(AI)などの普及によりビッグデータ化が加速している。一方で、クラウドの負荷低減のためのエッジコンピューティングの多様化や大幅な台数増を背景に、高速で大容量の通信手段が不可欠となる。このため5G、さらにはその先の6Gへの移行は避けられず、低損失の基板材料や基板技術の確立が急務となっている。特に低誘電材料、インターポーザー材料、ガラスアンテナ、蓄電池の部材開発などに注力している。

―― 出資・事業提携にも積極的です。
 奥村 5G関連の技術や製品を持っているところを中心に事業提携などを進めている。スピードが大事になる。17年にはインクロンを傘下に収め、18年には米国の3DGSに出資した。いずれも次世代情報通信関連で独創的な技術や製品を展開しているベンチャー企業だ。当社にとってはデザインやアプリケーションなどの知見を保有することになり、既存ビジネスとの相乗効果が大いに期待できる。今後、数十億円規模のスタートアップ企業への出資を積極的に行っていく。

―― 3DGSならびにインクロンの事業概況を。
 奥村 3DGS社は06年設立で、感光性ガラスを用いた半導体パッケージや高周波デバイス・モジュールの設計・製造を強みとしている。中空構造で形成したアンテナや素子が低損失になることから、5G対応の基地局や通信モジュール、高速画像処理基板などに展開が可能とみている。
 インクロン社は5G対応電子デバイス向けシロキサン系絶縁・導電材料を中心にナノ粒子・分散材を配合した機能性インク、光学コーティング材を展開する。AR/VR向け光学部材のコーティング材料のほか、光導波路向け材料などを狙う。ダイアタッチ剤や封止材としての応用も見据えており、現在通信用LED向けに評価中だ。

―― 世界中で様々な技術・製品ネットワークを構築しています。
 奥村 欧州ではフィンランドの研究機関と連携するインクロンをはじめ、レーザー接合技術をベースにしたパッケージング装置やバンピングサービスを展開するドイツPacTechがある。北米には前述の3DGSのほか、ウエアラブルデバイス向けのストレッチャブル導電インクなどを手がけるEngineered Materials Systems(EMS)などを擁している。日本では、マイクロレンズ・記録媒体用ナノ材料などを扱うナガセケムテックス、高機能なリチウムイオン蓄電池システムや再生可能エネルギーを使った非常用電源システムを手がけるCAPTEXなどグローバルでビジネスを展開している。

―― バンピング事業など実際のものづくりにも注力していますね。
 奥村 当社は商社でありながら、研究開発~製造~加工部門を持っている点でもユニークだ。グループ化したPacTechはマレーシアで高性能半導体向けのウエハーバンピング事業も手がけている。12インチウエハーにも対応し、無電解めっき/電解めっき、はんだボール搭載などによる30μm径~750μm径までのあらゆるバンピングサービスが得意だ。最近ではリワーク事業にも注力しており幅広く展開している。

―― 中長期的な事業規模のイメージを。
 奥村 次世代情報通信プロジェクトチーム(現在は約10人)を発足させ、今後はエネルギーマネジメントを展開するCAPTEXらとの相乗効果にも期待している。5/6G関連事業が軌道に乗れば、次世代情報通信をベースにした新規事業の売上高で1000億円前後を狙う。


(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2020年12月17日号5面 掲載)

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