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第402回

UTAC シニア・バイスプレジデント 日本法人責任者 兼マーケティング・事業開発担当 アシフ・チョードリー氏


20年は15%成長見込む
車載中心に日本市場拡大

2020/11/27

UTAC シニア・バイスプレジデント 日本法人責任者 兼マーケティング・事業開発担当 アシフ・チョードリー氏
 シンガポールに本拠を置くOSAT、UTAC(日本法人=京都市下京区中堂寺栗田町93、Tel.075-963-6250)は、日本におけるビジネス拡大を目指している。車載半導体における豊富な実績や、パナソニックから取得した工場から学んだ高度な品質管理ノウハウを武器に、新規顧客開拓を図る。同社シニア・バイスプレジデントで、日本法人責任者兼マーケティング・事業開発担当のアシフ・チョードリー氏に話を聞いた。

―― 車載半導体市場で高い地位を占めている。
 アシフ 当社は20年以上もの歴史を持ち、シンガポール、タイ、中国、マレーシア、インドネシアに製造拠点を置いている。アナログ製品が重点分野で、テキサス・インスツルメンツ(TI)やアナログ・デバイセズなど世界の大手半導体メーカーから製造を受託している。アナログ製品は売り上げの50%を占めており、ほかにもミックスドシグナルやロジックデバイスを手がけている。また、パッケージの組立に加えてテストを受託していることも特徴で、テストの売り上げは同業他社の10~20%に対し約30%を占めている。
 自動車市場では世界トップ3の地位を持つ。車載半導体に求められるプロセス、品質を実現し、欧米や日本の自動車メーカー、部品メーカーに提供している。また、産業用や医療用半導体も重点分野としており、自動車も含めたこれらの市場向け売り上げは約35%である。自動車や産業用市場向けではパワーデバイスやディスクリート、センサーなどがある。特にセンサーは車載、産業用MEMSやイメージセンサーに注力し、組立、テストを一貫提供できることが評価されている。

―― 2020年の事業動向は。
 アシフ 前半は新型コロナウイルスの影響で自動車市場が落ち込み、懸念していた。しかし、市況が回復して7~9月期以降に需要は100%に戻った。自動車以外ではリモートワークやネット配信サービスなどの巣ごもり需要の拡大により、PCやタブレット、サーバー向けが好調だ。これによりタイの工場はフル稼働となっており、7~9月期には前四半期比で40%の増収を確保した。スマートフォン(スマホ)向けで大口の受注を獲得したこともあり、通年では前年比で15%の増収を見込んでいる。グローバルで2~4%の成長が予想される半導体市場全体を大きく上回る数字だ。

―― 5G、車載半導体市場に向けた取り組みは。
 アシフ 車載半導体向けは毎年着実に成長を続けており、顧客と長年の信頼関係を築いてきた。さらなる高品質化に向けて、生産の自動化やテストのハンズフリー化に取り組んでいる。また、テストでは高温、常温、低温と幅広い温度での対応にノウハウがある。
 5G向けではより高周波への対応を目指し、基地局用のキャビティーパッケージを開発している。また、テストでもテスターメーカーと協業してより高周波に対応し、コスト力のあるテスト技術の開発を進める。

―― 工場自動化の取り組みを詳しく。
 アシフ 自動車市場に向けた生産自動化の取り組みを3年前から開始した。タイ工場に専門のチームがおり、自動化システムを社内で開発している。車載半導体の生産を完全自動化するとともに、全検査のハンズフリー化を目指す。また、シンガポール工場ではファンアウトやプラズマダイシング、ウエハーレベルCSPやSiPなど新規パッケージの開発に取り組み、それらの自動化も図っている。今後3~4年以内に開発した自動化技術を展開し、全工場の自動化を目指す方針だ。

―― 日本市場での取り組みを。
 アシフ 14年にパナソニックからシンガポール、インドネシア、マレーシアの3工場を取得し、本格的に日本事業を開始した。この3工場は長年稼働した実績があり、日本市場で要求される高度な品質管理システムを備えていた。当社の既存の工場にそのノウハウを展開するなど、大いに学ぶものがあった。
 日本法人を設立して以来、大手自動車メーカー、部品メーカー向けにアプローチを進めており、パワーデバイスやアナログ、産業用イメージセンサーなどで受注を獲得している。

―― 日本の顧客開拓への強みと今後の目標を。
 アシフ 日本の顧客の品質に対する要求は厳しいが、当社はマネジメントが日本人のマインドを良く理解している。コストに関してはタイ工場などの安定したローコスト人件費により、競争力のある価格が提供できる。タイの工場には日本語に対応可能なエンジニアが常駐しており、人員を増やして対応力を強化する方針だ。また組立とテストを分離せずに受託することで、お客様にコストメリットを提供できる。組立やテスト能力にも積極的に投資する方針で、増加する需要にも対応できる。日本の顧客を拡大していくうえでは信頼関係を築くことが重要で、時間をかけて長く付き合える関係を構築したい。
 当社の日本市場における売上高は全社の約14%である。パナソニック向けが中心だったが、台湾のヌヴォトンに買収されたこともあり、中期的には減少していくと予想している。一方、日本法人設立以来、信頼関係の構築を進めてきたこともあり、パナソニック以外の顧客は拡大している。22年までに足元比で非パナの売り上げを2倍強に伸長させる。


(聞き手・中村剛記者)
(本紙2020年11月26日号5面 掲載)

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