電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第32回

「グリーンアジアを支える半導体に活路がある!!」


~シリコンシーベルトサミット福岡、2013年は初の北九州開催~

2013/3/1

シリコンシーベルトサミット福岡は初の北九州開催
シリコンシーベルトサミット福岡は
初の北九州開催
 「東京エリアでこれだけの半導体関係者を集めるシンポジウムはもう開けないよね。九州はやはりニッポン半導体の一大集積地だとつくづく思う。今や福岡はアジアに開かれた日本の玄関口であるだけでなく、半導体情報の発信基地になっているんだな」

 今年で11回目を迎えたシリコンシーベルトサミット福岡(2月19日開催)の会場で久方ぶりにお目にかかった人が、ため息をついて語った言葉である。この人は大手半導体メーカーのトッププロセスエンジニアであり、ニッポン半導体黄金期を切り開いた重要な役者の1人であった。まことにさよう、半導体産業新聞が総力を挙げたとしても、首都圏エリアでこれだけの大型カンファレンスは今日において開催できない。この力を持つのは、もはや九州エリアにしかないのだ、という感想を筆者は持っているのだ。

 さて、シリコンシーベルトサミット福岡は11回目を迎え、初の北九州市での開催となった。これには意味がある。今回のテーマは「グリーンアジアを支える半導体」というものであり、再生可能新エネルギー、スマートコミュニティー、省エネルギー社会を実現する各種のデバイスにフォーカスしている。環境・エコといえば、世界で4つの優れた都市の1つに選ばれた北九州市の出番なのだ。加えて、北九州市は今年が市制発足50周年のメモリアルイヤーでもある。

 福岡県が次の成長目標として選出した半導体集積は、12年前の福岡先端システムLSI開発拠点会議のスタートに始まり、次いで九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会が重要な役割を担っていく。九州電力相談役の鎌田迪貞氏は、この12年間の活動を陣頭指揮で引っ張ってきた人であるが、今回のサミットではこう挨拶された。
 「シリコンシーベルト福岡プロジェクトがスタートした12年前は、福岡エリアの半導体関連会社はわずか21社しかなかった。今日においては10倍の253社が集積するまでに成長を遂げた。また、同時並行で進めてきた福岡システムLSIカレッジにおいては、これまでに1万人の技術者養成を行ってきた。今後も半導体関連中小企業のサポート、半導体ベンチャーの育成に注力していく」

 半導体ベンチャー支援でいえば、2004年に開設した「システムLSI設計試作センター」、さらに2011年に立ち上がった「三次元半導体研究センター」「社会システム実証センター」を加え、ハード、ソフトの両面で新たな飛躍の条件が整った。こうした実際的な活動の先頭に立ってきた九州大学副学長の安浦寛人氏は、かつてインタビューした折に、かなり強い口調でこう言っておられた。

 「最先端のナノプロセス半導体だけが社会に貢献するわけではない。圧倒的に消費電力を削減するマイコンやシステムLSIは、電池切れでみんな困っているスマホやケータイに大きく貢献するのだ。これらのチップの解は微細化だけではない。デバイスの構造や回路の工夫も重要なのだ。また、日本が世界シェアの70%を押さえているパワー半導体の先端品IGBTは、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギー、さらには高速鉄道、エアコン、次世代環境車には必須の技術だ。省エネをやらせたら日本の右に出るものはない」

 まさに、今回のシリコンシーベルトサミットは、アジア全域を見据えた上で、グリーンイノベーションに貢献できる半導体技術の将来性を探そうというものなのだ。それにしても、中国から風に乗って飛んでくる有害物質に対し、これをブロックする技術はないのかと切に思う。それ以前に、中国政府に対し、北九州市などが得意とする公害除去技術をもっと採用させていくというアクションが必要なのかもしれない。しかしながら、領海内、領空内を侵し、挑発を繰りかえすという今の中国の現状では、耳を貸さないかもしれないな、とも思いあぐねた。しかして、公害で苦しむ中国の人たちを日本の環境技術で救う、という考え方のどこに誤りがあるのであろうか。

 ところで、福岡エリアの人たちの眼はかなりのところ、アジア太平洋に向けられている。何しろ、日本の首都である東京よりも、韓国ソウル、中国上海、台湾の方がよっぽど近いところにあるのだから、それも致し方ないところだ。街を歩いていても、多くのアジアの人たちに出会う。アジアからの若き留学生のはつらつとした姿にも驚かせられる。

 筆者も福岡での付き合いは多く、好むと好まざるとにかかわらず、博多の中洲川端で飲み歩くことも多い。中洲川端の夜のお姉さまが、美しいまつ毛をしばたたかせて、おっしゃったことを想い出した。

 「東京に行ったことはありません。また、行きたいとも思いません。私たちは、福岡を出たくないのです。ここでは何でも手に入るし、豊かな自然があるのに適度に都会だし、食べ物はおいしいし、何よりも暮らしやすいからです。東京はダメ。東京の男はもっとダメ」

 こう言われてしまったら、何にも言えねえ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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