商業施設新聞
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No.396

ランナーの悲哀


松本 顕介

2013/1/29

今シーズンの初戦となった横浜マラソン(12年12月)
今シーズンの初戦となった横浜マラソン
(12年12月)
 日経本紙で、定期的に特集を組んでいる「マラソン特集」を楽しみにしているのは私だけではないだろう。1月19日号もためになる特集だった。その特集のなかでも、吉田誠一編集委員の「ランナーのホンネ」コーナーはいつもながら感心させられる。そうそう、そうなんだよな、というランナーの気持ちや悲哀を見事に表し、目から鱗が落ちる思いであった。吉田編集員はスポーツ面で「フットボールの熱源」を連載されているからご存知の方も多いのでは。

 ただ、私は「フル」にチャレンジしたことがなく、「ハーフ」専門で、デビュー戦は1999年3月の三浦国際マラソン。当時、今ほどのブームでなかったものだから、職場の連中に走る事を宣言したら、「そんなの無理」「よくやるねえ」と変人扱いされたもの。しかし、いざ会場にいってみると、たくさんの「変人」達に出くわした。学生時代の部活動でも21kmを走ったことがなく、なかば物見遊山的に参加したが、そこで思い知らされたのが、練習の大切さであった。

 それは今でも変わらない普遍的なもの。個人的には走った分だけ、結果がついてくると思っている。過去にタイムが伸び悩む中、6年ほど前に一念奮起して練習量を大幅に増やしたところ、ベストから10分縮めることができた。

次のレースに向けて走った。今年は寒い日が多い
次のレースに向けて走った。今年は寒い日が多い
 だがその鍛錬たるや我ながらよくやった。休みの日はもちろん、平日はくたくたの体に鞭を打ち、真冬の夜中に走りこんだ。しかし今となってはその気力も体力もない。2月もエントリーしているので、練習量を稼ぎたいが、平日は帰宅すると体が疲れて気持ちが乗らない、休日は週の疲れがたまり、それを癒してさあ走るぞと気持ちが盛り上がった時ほど、何かと用事をいいつけられることが多い。そしてレース後半、ああ、あの時サボらずに走っていればと後悔の念にかられるのであろう。

 「ランナーのホンネ」によると、吉田氏は04年11月からすでに34回のフルマラソンをこなしているという。年4回ペースである。同じ生業の身としては、どうやって練習時間を確保しているのかに興味が湧く。フルはハーフよりも準備期間を相当要するだろうし、やはりタイムにもこだわりたいのであろう。夜中走っているのだろうか、早朝か。それとも取材先までランニングで……。一度、英国のサッカー事情をリポートされていたが、現地にシューズを持っていったのか。

 タイムをどんどん縮められるのは楽しいが、残念ながら過酷な練習の末にタイムを10分縮めたあの感動はもう味わえないのではないかと思っている。今の楽しみは走りながら街の変化を見ること。幹線道路沿いにまた増えたコンビニや、あの家電量販店が閉店してスーパーになるニュースを記者が書いていたな、などなど。

 そしてまたレースに出て、気持ちよくレースを終える。いつかフル出場を夢見て。だが、同じマラソン仲間は「フル」出場後は休暇をとる人が多い。翌日、体が動かないのだそうだ。月曜日は何かと立て込む。それもまた私を「フル」から遠ざける。
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