商業施設新聞
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No.394

新政権へ地域に根ざした復興を期待


登坂 嘉和

2013/1/15

 東日本大震災が発生してから2度目の正月を迎え、この3月11日で丸2年が経過する。津波被害が大きかった太平洋沿岸部の宮城、岩手県では、被災した家屋や事業所、公共施設がほぼ撤去され更地となっている。

石巻市日和山から旧北上川を望む(12年12月撮影)
石巻市日和山から旧北上川を望む
(12年12月撮影)
 直接的な建設工事は見えないが用途地域の変更に伴う都市計画決定の手続きが進められており、今春には石巻市中心部における市街地再開発が事業認可される見通しで、再開発ビルの建設案件も徐々に増えつつある。ただ、福島県は、東京電力福島第1原子力発電所の被災、事故により、近接する市町村は住民や役場機能が福島県中通り地区や茨城県、埼玉県などへ避難しており、除染を含む復旧には、長い時間が必要な状況だ。

 復興庁によると、2012年9月30日時点の仮設住宅などへの入居者は約32万7000人で、福島県の住人は半数の約16万人、このうち避難指示区域などからの約11万人が避難生活を送っている。

 また、被災3県の沿岸市町村における災害廃棄物処理の進捗状況は、推計総量が2758万tで、処理・処分の割合は岩手県が31.4%、宮城県が36.8%、福島県が19.4%、計33.6%となっており、13年度末の処分完了を目指している。ただ、福島県の浪江町と双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町の5町は原子力災害の影響で進捗率がゼロの状況だ。同地域では帰町に向けた除染作業を行っており、瓦礫処理とともに放射性廃棄物の中間貯蔵施設の用地確保などもあり、目標の期日は設定されていない。

 復興の進み具合はというと、海岸線に沿った被災地は土台を残した広野がひろがり、建物の再建は遅々として進んでいないといわれる。ただ、高さ数メートルの津波が押し寄せ、浸水した地区は、住宅地としては不向きであることから、公園や非住居地域への都市計画変更手続きが行われており、住民の合意形成といった作業に時間を要しているのが現状だ。

 12年12月に発表された復興の進捗状況によると、災害公営住宅の整備は、必要戸数約2万1000戸のうち5651戸が着工した。防災集団移転は、計画策定費配分地区229地区のうち188地区が国土交通大臣の同意を得ている。土地区画整理事業では、57地区のうち34地区で都市計画決定がなされ、漁業集落防災強化では、104の予定地区のうち41地区が認可されるなど水面下の行政手続きは着々と進められており、復興庁の役割が機能しはじめている。今後、寸断された三陸地域の鉄道もBRT(バス専用道などにバスを走らせる高速輸送システム)の採用も含め、14年度の復旧が見込まれる。

 前民主党政権は、震災直後の対応が混乱し、原子力災害でも重要な情報が自治体や被災者に提供されなかったことなど、災害対応の初動は的確であったか疑問が残る。救いは被災者らの冷静な判断と行動と、警察、消防、自治体職員、海上保安庁、自衛隊などの職員・隊員の献身的な救助、復旧作業が挙げられる。昨年の衆議院解散総選挙で新たに発足した自民党を中心とする新政権には、被災した地域の人々の要望に沿った復興と、原子力災害で故郷を追われた約11万人の一人ひとりの未来に光が当たる施策を期待したい。
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