電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第401回

リンクウィズ(株) 代表取締役 吹野豪氏


工場データ管理ツールの開発強化
20年7月期は2倍の事業成長達成

2020/11/20

リンクウィズ(株) 代表取締役 吹野豪氏
 リンクウィズ(株)(浜松市東区篠ケ瀬町1044-2、Tel.053-401-3450)は、独自の自律型ロボットシステムソフトウエアを展開するスタートアップ企業。同社のソフトウエアを組み込んだPCを産業用ロボットシステムに接続するだけで、対象物体を自律的に認識するロボットシステムを構築でき、2015年の設立から採用企業数を年々増やしている。今回、代表取締役の吹野豪氏に話を聞いた。

―― 貴社の製品について。
 吹野 主力製品として、自動検査ツール「L-Qualify」とロボットティーチング自動補正ツール「L-Robot」を展開している。L-Qualifyは、産業用ロボットや3Dスキャナーと組み合わせて使用するソフトウエアで、溶接検査、穴位置検査、寸法検査などを高精度かつ自動で全量行うことができ、検査工程を自動化できる。L-Robotもロボットと組み合わせて使用するソフトウエアで、L-Robotを搭載したロボットはワークが作業工程にずれて入ってきても、そのばらつきに合わせて軌道を自動で補正できる。

―― 注力していることは。
 吹野 工場全体の効率化を図るシステム「LINKWIZ FACTORY CLOUD」(LFC)の開発に力を入れている。デジタル化した様々なデータを一元管理して統合できるデータ連携ツールで、L-QualifyやL-Robotを搭載したロボットと製造現場内のセンサー類などを連携させ、そのデータをクラウド上で解析することで、製造工程をリアルタイムでチェックできる。これにより対象ワークのばらつきやロットごとのトレンドの解析などが可能となる。また、当社製ロボットシステムの導入時にLFCも導入していただくことで、システムの立ち上げ時の状態を遠隔で監視することなどもできる。

―― そのほかの取り組みは。
 吹野 LFCのデータを1社だけでなく、複数の企業にまたがりサプライチェーン全体で共有するシステムにできないかと考えている。これにより、製造現場で何か問題が発生した際、出荷検査や受入検査のデータなどを1社だけでなくサプライチェーン全体でチェックでき、素早い原因の究明につながるとともに、サプライチェーン全体のコストダウンにもつながる。

―― 製品の引き合いは。
 吹野 20年7月期はL-QualifyならびにL-Robotの引き合いがともに好調に推移し、売上高は前期比約2倍に拡大した。分野としては、輸送機関連が中心だったが、大手ゼネコン企業とビル建設現場でL-Robotを活用する取り組みが進むなど、用途の拡大も進んでおり、21年7月期についても前期比2倍の事業成長を目指していきたい。LFCについても実現場における本格的な実証が進んでおり、LFCのシステムをパッケージ化した製品を21年7月期内に市場投入していきたいと考えている。

―― 企業との連携も進めている。
 吹野 パナソニック(株)(大阪府門真市)と溶接分野の共同事業開発契約を19年6月に締結した。その一環として、溶接外観検査ソリューション「Bead Eye」(ビードアイ)を共同開発し、5月に発表した。パナソニックの溶接ノウハウやAI技術と、当社の3次元データの解析技術を組み合わせることで様々な溶接欠陥を検出できる技術で、溶接後の検査工程の自動化、検査基準の統一、トレーサビリティーの確保などに貢献する。
 このほか、パナソニックの中国・唐山、米オハイオ州、独デュッセルドルフの拠点に当社システムのデモ機器を配置するなど、営業面での連携も進めている。

―― 今後の事業の方向性について。
 吹野 生産年齢人口の減少に伴う人手不足に加え、新型コロナウイルスの影響による3密回避などの面からも、製造現場における自動化技術の必要性、さらにいえば「未来の製造現場の形」を模索する動きが高まっており、当社に対する問い合わせや資料請求も増えている。当社としてはL-QualifyとL-Robotに加え、LFCを第3の製品として事業の柱に育てていくことで、お客様の要望に応えていき、23年7月期には売上高15億円を目指していきたい。
 また、お客様が安心して製品を活用していただくために、ロボットによる計測システムを規格化する取り組みも必要だと考えており、様々な企業や関係団体と連携しながら規格案の作成なども目指していきたい。


(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2020年11月19日号11面 掲載)

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