商業施設新聞
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No.782

古民家を活用したホテルが増える背景


北田啓貴

2020/11/17

11月1日にオープンした「NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の里」
11月1日にオープンした
「NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の里」
 兵庫県福崎町で11月1日にオープンした「NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の里」の内覧会に参加した。同施設は、約300年前に建築された「大庄屋 三木家住宅(兵庫県指定重要有形文化財)」を活用し、客室へとリノベーションした古い蔵などの中で宿泊することができる。静寂で落ち着いた雰囲気が漂う客室を内覧し、都心の高級ホテルとは違う贅沢な空間に癒された。


 この施設にはもう1つの特徴がある。それは、国および都道府県の指定文化財がホテルとして活用された全国初のケースであるという点だ。2019年4月に改正文化財保護法が施行され、保存だけではなく維持していくための活用方法も重要視されるようになった。改正の背景には、過疎化や少子高齢化に伴い、文化財の保存に必要な費用負担を寄付や見学料などで、文化財の膨大な修理および維持管理のコストを継続的に補うことが困難になってきているからだという。そのうえで、このホテルが全国に約1万5000ある国および都道府県・市町村指定の文化財(建造物)のモデルケースとしても期待されている。

 そういえば、近年、西日本鉄道(株)(西鉄)や九州旅客鉄道(株)(JR九州)などが古民家を活用した宿泊施設を開発する事業を進めている。西鉄は、福岡県太宰府市にある江戸時代末期から絵師の住居であった古民家をリノベーションし、「ホテル カルティア 太宰府」という名称で19年10月にオープンしている。JR九州は9月、日南市が実施した「飫肥地区歴史的建造物利活用事業」の契約予定者に選定され、日南市の指定文化財である「旧伊東伝左衛門家」を1棟貸しの高級宿泊施設への改修を計画している。開業は21年度中を予定している。

 加えて、古民家を活用したホテルは建造物の維持管理の側面だけはなく、滞在型観光を促進するための起爆剤としての役割も期待されている。

 古民家を活用したホテルは、今後増加が見込まれる。今回の取材をきっかけにホテルの魅力だけはなく、街づくりや効果なども含め引き続き取材していきたい。
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