電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第399回

(株)TOP 代表取締役社長 山本惠一氏


車載用モーターで強み発揮
創立20周年に300億円標榜

2020/11/6

(株)TOP 代表取締役社長 山本惠一氏
 2004年の創業以来、モーター専業メーカーとして技術革新に挑み続けている(株)TOP(福井県越前市今宿町第20-1、Tel.0778-23-6500)。前身は武生松下電器、かつ創業時は武生市(現越前市)であったことなどを背景に、Takefu Original Productionから現社名「TOP」と命名した。
 同社を率いる代表取締役社長の山本惠一氏は、創業立ち上げメンバーの1人であり、06年から社長の任にある。前身の武生松下電器に入社以来、モーター一筋に歩み続け、平成に入ってからは中国、マレーシアなど海外工場での長年にわたる赴任経験も有する。自然豊かでおろし蕎麦で有名な武生の地を訪れ、山本社長に同社の現状、強み、展望など話を聞いた。

―― モーターを主業務とされています。
 山本 創業時は空調向けや冷蔵庫向けなど家電用モーターが中心だった。そうしたなか、05年に電動アシスト自転車用DCブラシレスモーターの販売を開始し、大ヒットとなった。累計販売台数は426万台に達し、国内シェア4割程度を占めるに至っている。
 一方、世の中の流れも08年のリーマンショックを機に、家電が強みだった日本企業の産業構造も大きく変化していった。この流れを受け、当社は電動アシスト自転車用モーター製造などで培った技術を礎に、少しずつ種まきをしながら自動車向けに大きく方向転換を図ることになる。

―― 現状は車載向けモーターが主軸ですか。
 山本 現状では車載向けが8割以上を占め、主力事業に成長している。07年から開発を開始したEV(電気自動車)用DCブラシレスモーターが、08年の北海道洞爺湖サミットで移動用に使用されたスバルのEV「ステラ」約300台に採用されたことが契機となり、13年からEPS(電動パワーステアリング)用DCブラシレスモーター、ハイブリッド自動車駆動用モーターを本格投入した。前者は日産自動車のスカイラインへ13年から供給し、累計生産台数は37.5万台を数える。後者はスバルのHEV全車種へ供給中で、累計生産台数は14万台に達している。
 こうした実績もあり、国内車大手メーカーからの受託生産案件も増え、HEVバッテリー冷却用ファンモーター、ABS/ESC用DCモーターなどでも実績を重ねた。

―― 自動車以外のモーター製品は。
 山本 電動アシスト自転車用モーターで培った核となる部材を用いて、眼鏡レンズ加工機用、シャッター用、壁紙糊付け機用、ロボット移動用などにもモーター製品を展開しているほか、当社の原点となる空調用・製氷機用誘導モーター、業務用掃除機・バキューム用ブラシ付直流モーターも継続供給している。新規開発などはほぼ無くなってきているが、これらの製品には当社モノづくりのノウハウ、原点が詰まっている。

―― 貴社モーター製品の強みは。
 山本 当社は本社工場で、材料入荷からプレス、樹脂成型などの源泉工程、巻線・ローター組立などの中間工程、モーター完成品組立・検査、出荷まで一貫生産体制を構築している。材料から仕入れて部品から作るため、課題に対し部品から手直しできる。モーター内の分割コア、集中巻き、モールドなどの仕様が特徴で、精度よく作り上げている自負がある。さらに、お客様と一緒に図面から携わる点も強みと言える。商品開発費などを含め、毎年1億~2億円程度を投じている。

―― 車載用モーターを手がける難しさは。
 山本 自動車駆動用モーターでは、従来のモーター製品に比べ、コイルに大量の電流を流せるようにコイルを太くして巻く必要がある。その際、巻き付けられる側の部品の変形やクラックなどへの対策を講じられる高い技術力を要する。また、車両としての故障原因となるコンタミ対策を厳格に行う必要もある。

―― 業績面や展望を。
 山本 全社売上高は3年前から年率20~30%成長となり、19年度には120億円に達した。20年度は世界的な新型コロナの影響もあり前年度比2~3割減を見通している。しかし、5月をボトムに9月あたりから回復基調に入っており、21年度は明るめと見込んでいる。24年度で創立20周年を迎えるため、売上高300億円を目標に定めて挑んでいきたい。このタイミングでは、小型電動車両用に機電一体型eAxleの提供も見据えている。今いくつか飛んできているボールを叶えていけば不可能な目標ではないと信じている。また、東南アジアなど海外展開も視野に入れていく。

―― 経営者として社員に徹していることは。
 山本 「思うことを形にせよ」「仕事では受け身にならず、自分で考え自分で行動」という2つのことを常に伝えている。思っているだけでは何も始まらず、形にすることで様々なアイデアが出てくる。現在開発中のeAxleも、この当社のカルチャーから生まれ、形になろうとしている製品の好例だ。将来的には空飛ぶ車向けなどユニークな製品が創出されることを期待している。


(聞き手・高澤里美記者)
(本紙2020年11月5日号2面 掲載)

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