三井不動産(株)(東京都中央区日本橋室町2-1-1、Tel.03-3246-3131)が公園一体型商業施設ブランド「RAYARD」を立ち上げた。東京都渋谷区では7月に宮下公園の再整備事業として、名古屋市では9月に久屋大通公園の再整備事業としてオープン。いずれの施設も賑わいをみせており、『公園+商業施設』の可能性を感じさせる。各施設の開発について、商業施設本部アーバン事業部事業推進グループ統括の松本和之氏、同部署主事の鈴木達也氏に聞いた。
―― 渋谷の「RAYARD MIYASHITA PARK」の開発コンセプトについて。
渋谷の新たなランドマークの
「RAYARD MIYASHITA PARK」
松本 宮下公園の再整備事業として、ホテル、駐車場などと複合的に開発し、7月28日にオープンした。開発においては屋上に公園があるだけでなく、公園と一体化した商業施設とすることを意識した。
開発コンセプトの一つが“通り”。宮下公園は南北に330mほど延びる縦長の敷地。また、周辺を見渡すと、明治通り、公園通りなど様々な通りに面している。そこで公園と併設する商業自体も一つの“通り”とすることにした。
MDにおいては海外高級ブランド、ファッション店、飲食、書店、ギャラリーなど幅広く、1店1店個性的なブランドを誘致した。これを長い“通り”に配置することで、街歩きのような楽しみをつくった。
また、明治通りに面したエリアはアウトモールにしており、飲食店はテラス席などを設けている。共用部にはファニチャーも多く配置し、通路がたまり場になっている。こうしたアウトモールの賑わいは明治通りから見えるようにしており、さらに公園にアクセスする導線は明治通りなどから視認性が高いところに設置した。アウトモール、縦導線など外へ、外へと賑わいを発信し、施設内や公園に足を運びたくなるようにした。
―― 意外と渋谷駅から近いのですね。
松本 南端はのんべい横丁に隣り合うようになっており、駅のすぐ近く。以前、南端は駐輪場があって通れなかったが、周辺の導線を整備することで“通り”としての魅力を上げた。のんべい横丁と接するエリアには約100mにおよぶ「渋谷横丁」を設けており、のんべい横丁とともにエリアの魅力を増すことにもつながる。
―― 横丁と海外高級ブランドが同じ施設にあるのは驚きです。
松本 この施設は面白い立地で、渋谷、表参道、青山など様々なエリアの結節点で、施設の南北でエリアの表情がかなり違う。ラグジュアリーブランドは明治通り沿いの路面店として出店しており、これらのブランドがあるエリアは青山の空気感もどことなくあり、一方で横丁があるエリアは一本中に入り、味わいがある。やはりデベロッパーとして、本来持っている土地の価値、特徴を最大限生かせるテナントを誘致したい。
―― 改めて面白いテナントが揃いましたね。
松本 やはりカルチャーやエンタメ系など渋谷らしいテナントを揃えたかった。このミックスや、オープンエアの雰囲気、公園と一体化した低層建物である点を評価して出店していただいた企業も多い。数カ月で入れ替わるポップアップストアを展開する区画もあるほか、一部のテナントには限定商品を展開していただき、施設を訪れる楽しみを作った。
―― 開業から3カ月、賑わいが目立ちます。
松本 色々な人のたまり場になっていると感じる。公園では老若男女、本当に幅広い方が思い思いに過ごしている印象だ。アウトモールには多くのファニチャーを置いたが、カウンター付きなど様々なシチュエーションに対応している。「ここはこういう風に使ってください」でなく、色々な過ごし方のきっかけとなってほしい。
こういうきっかけ作りは施設全体のコンセプトでもある。屋上の公園にはスケートパークやボルダリングウォール、サンドコートなど様々な機能を設けており、例えば子供たちがここをきっかけにスケートボードを初めて、将来、カルチャーを作ってくれることになればうれしい。MIYASHITA PARK全体でそういうきっかけ作りの場になってほしい。
―― 名古屋市でも開業しました。
鈴木 「RAYARD Hisaya-odori Park」として9月18日にオープンした。栄地区にあり、名古屋市が所有している久屋大通公園の再整備事業となる。公園北側の約1kmをPark-PFI事業で再整備するにあたり、名古屋市が事業者を公募し、当社が選定された。
※次週に続く
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2366号(2020年10月13日)(1面)
三井不動産に聞く 公園+商業施設のポテンシャル