昔から一息入れることが好きだった。タバコをすっていた当時は、事あるごとに何がしかの理由をつけては一服していたし、とにかく区切りをつけて休むことが好きなのかもしれない。よくよく考えれば子供の時、親に買い物に連れまわされていた時にも常に一休みすることが念頭にあったと記憶している。
今でもその習性は変わらない。ショッピングセンターや百貨店に買い物に行く時などは、まずは到着するとすぐに一息入れるため、休憩スペースやコーヒーショップを探すのが常となっている。
自分と同類の人が多いせいかもしれないが、最近の商業施設ではこれでもかというほど休憩スペースを取った施設の出店が多くあり、これにマッサージやエステなどリラクゼーションショップを加えた施設展開が目立ってきた。稼ぐためのスペースを休憩などのサービススペースに割くなどこれまでの商業施設では考えられなかったことであり、形態が大きく変化しているのがすぐわかる。昨年の東日本大震災により、消費者動向が変わったのも一因とも見られるが、ゆとりという重要性が新たに見直され、それが商業施設に組み込まれたともいえる。
実際、家の近くにある大型スーパーでは、全面リニューアルに際して1フロアの多くのスペースにエステやリラクゼーションスペースを設けた。従来のGMSでは考えられないことである。
この傾向は比較的高所得者層が利用する百貨店で顕著だ。2年ほど前に増床オープンした銀座三越では「おもてなし」の精神を追求し、ワンフロアに公共スペースである「銀座テラス」を設けた。10月に増床オープンした大丸東京店では、物の購入だけでなくサービスを目的に来店する機会を増やすため、リラクシング・美容サービス部門を3ブランドから9ブランドへ大幅に拡充し、これまで百貨店では取扱いのなかったカイロプラクティックや気軽に利用できるエステバイキングなどを導入している。
さらに国内の百貨店売り上げトップクラスの阪急百貨店うめだ本店では、9階のワンフロアに物販施設を置かず、吹き抜け大空間の祝祭広場を中心に、阪急うめだホール、阪急うめだギャラリー、アートステージを設け、百貨店とは思えない文化的な空間としている。カフェスペースも全館で改装前の1.5倍の14店、800席を設けるなどゆったりとくつろぐには十分なスペースを確保し、店内のレストスペースも全館に約300席を配置するなどこれまでの商業施設のイメージが覆された感もある。
これが今の消費者ニーズを捉えた商業施設のトレンドなのかもしれない。今後は、買い物をしなくても訪れる機会が増えそうだ。
阪急百貨店うめだ本店の祝祭広場では様々なイベントが行われている