電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第17回

やっぱり、見つめてくれなきゃきれいになれない!!


~かつてのTV世界チャンピオンのソニーは中国のシェアわずかに3%~

2012/11/9

SONYのFPDTVの中国におけるシェアはたったの3%'
SONYのFPDTVの中国における
シェアはたったの3%
 「見つめてくれなきゃきれいになれない!!」というTVコマーシャルのコピーを覚えている人は、もうかなりの年代だろう。筆者の記憶では、女性化粧品の宣伝に使われたコピーであったと思うが、定かではない。

 もっとも最近では、オフィスで「なんてきれいな人なんだろう」とひたすら見つめ続ければ、つかつかとその美しき女性が近づいてきて、こうのたまうかもしれない。

 「さっきから何見てんだよ。セクハラで訴えてもいいのよん」

 何しろ、かなり多くの会社で、セクハラ規定が定められているが、そのうちの一つに「女性を舐めまわすような視線はいけない」と書いてあるのだ。もっとも、自分の好みの人が舐めまわすような視線を使った場合には、「好ましい視線」と言ってのけるのだから、女性の主観というものは恐ろしい。

 それはさておき、TV画像だって、もしかしたら「見つめてくれなきゃきれいになれない!!」のかもしれない。どのような高精細な技術、はっと驚くような色使い、すばらしい動画スピードを駆使したとしても、その画像を見てくれる観客がいなければ何もならないのだ。TVが世に出てから半世紀以上になるが、いまや世界チャンピオンには韓国のサムスンが君臨しており、かつてかなりの長期間にわたって世界チャンピオンであったソニーは世界3位に後退し、その栄華を知る若者も少なくなってきた。

 先ごろ、中国・上海に出かける折があったが、当社の上海支局の調べによれば、なんと中国国内のTV(FPD)においてソニーのシェアはたったの3%しかないというのだ。もっとも世界チャンピオンのサムスンですら、ソニーと並んで中国では3%しかシェアがない。日本勢でトップにきているのは経営危機が叫ばれているシャープであり、これがシェア4%である。

 驚くべきことに、中国におけるTVの80%のシェアは中国の国産メーカーがすべて牛耳っているのだ。トップを行くのはスカイワース(シェア17%)、これを追ってハイセンス(同16%)、3番手がTCL(同15%)となっており、いわゆる3強を形成している。

 「TVの世界もそうであるが、中国のIT製品はもはや『安かろう悪かろう』じゃない。その時代は終わった。かなりのクオリティーを達成しており、こちらでは、日本人でも中国製品を買うことに全く躊躇しない」(半導体産業新聞の黒政典善・上海支局長)

 仕事が終わって、一応はびくびくしながら上海の街を散策してみた。はっきりいって反日の匂いなど全くなかった。騒いでいるのは日本のマスコミばかり。中国では反日報道はほとんど封じ込められてしまったのだ。ソニーの販売店の前に立ってみたところ、かなりの人が素通りしていく。その光景を見ていたら、無性に切なくなった。

 半導体の基礎技術を確立し、トランジスタラジオで一世を風靡したソニー。トリニトロンという画期的な画像技術でTVの世界制覇を成し遂げたソニー。ウォークマンで若者たちをうならせ、歩きながら音楽を聞く喜びを世界の人たちに与えたソニー。あのソニーは一体どこに行ってしまったのだ。そう思いながら薄曇りの上海の空を見上げたら、ウォークマンを世に送った第2代社長の盛田昭夫氏の笑顔が浮かんできた。盛田社長は、いつも失敗をバネにしてはね返し、ソニーを成功企業へと押し上げて来たのだった。あの時、パシリの若造記者であった泉谷クンに、優しく笑いかけてきた表情が鮮やかによみがえってくる。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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