電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第395回

碌々産業(株) 代表取締役社長 海藤満氏


超高精度の微細加工追求
“四位一体”のモノづくり提唱

2020/10/9

碌々産業(株) 代表取締役社長 海藤満氏
 碌々産業(株)(東京都港区高輪4-23-5、Tel.03-3447-3421)は、高精度・微細加工に照準を合わせたマシニングセンターやNC工作機械の専門メーカーである。唯一無二の製品群を数多く世に送り出し、同市場のリーディングカンパニーを標榜する。経済産業省が選定した「2020年版 グローバルニッチトップ企業100選」にも堂々と名前を連ねる。社長の海藤満氏に、足元の事業環境や今後の事業展開を聞いた。

―― リーマン・ショックを機に主力事業を大きく変えてきました。
 海藤 以前は、プリント配線板用ドリルのビア加工機など産業機器向けが売り上げの6割以上を占めていた。しかし、台湾など海外勢の追い上げもあり、リーマン・ショック以降、当社は徐々に高精度かつ微細加工の領域に事業を集中することにした。今では半導体用プローブカード治具やスマートフォン(スマホ)関連部材を超高精度で微細に加工できる製品群が中心で、これらが売り上げの9割を占める業態に変えてきた。

―― 現在の主力製品を教えて下さい。
 海藤 高精度・微細加工機、特殊加工機、プリント配線板向け加工機など多岐にわたる。スマホ用イヤホンやカメラレンズの成型金型をはじめ半導体用プローブカード治具の高精度穴あけ加工機といった、1μm単位で超微細加工が必要な装置を幅広く製造している。最先端の加工精度は±0.5μmが要求されているが、当社では自前の恒温室との組み合わせで実現している。

―― 高精度な超微細加工を可能とする秘訣は。
 海藤 一言でいうと、それは“四位一体”と呼ぶ取り組みだ。具体的には(1)最適な微細加工機、(2)最適な工具、(3)最適なソフト(CAD/CAM)、(4)最適な加工環境が必要になる。これら4つの機能が揃うことで、究極の加工精度を安定して量産ラインに適用できるシステムが完成する。特に、4つ目の製造する現場の環境が大事になる。当社では、「JBOX」と呼ぶ恒温室の中に高精度・微細加工装置を設置して、作業することを提唱している。例えば室温23℃±0.1℃で制御しており、湿度制御も重要だ。我々が扱う様々な金属や新素材は、ちょっとした温度変化で寸法形状が変わってしまうからだ。これらの製造環境が整っていないと実際に安定して高品位の加工はできない。

―― 足元の市況は。
 海藤 当然、コロナ禍の影響はある。対面での営業ができず、新規顧客の獲得が難しい。しかし、既存のリピートオーダーだけでも根強い需要があり、幸い大きな影響は出ていない。2020年度(21年3月期)の上期(4~9月)は前年同期比5%減収を見込むが、下期以降の需要回復を期待する。通期では前年度比5%増収を目指す。

―― 新製品開発の方向性は。
 海藤 自社の微細加工装置に各種センサーを搭載し、装置の状態を常に監視できるようにした。データを収集し、ログ化してすべてを「見える化」することで、装置の予期せぬ停止を防いだりする。なにか異常が起こる前に先回りして対処し、製造工程の歩留まり悪化を防ぐ狙いがある。さらに、自前のクラウドサービスを構築し「コネクテッドマシーン」を実現した。今後はスマートファクトリー化も目指したい。

―― 人材育成にも注力していますね。
 海藤 先のスマートファクトリーを追求していくと生産性や歩留まりは飛躍的に向上する。しかし、現場からはイノベーション(革新)が生まれにくくなるだろう。当社は感性豊かなオペレーターの存在が大事と考えている。デジタルデータを論理的に分析・解析し、暗黙知を上手にデジタルに反映する創造性豊かな人材が今後求められる。高品位な加工品を日々製造している現場で、自分の得たスキルをためらいなく後人に伝承できるオペレーターに、敬意を払う意味も込めて「エキスパート・マシニング・アーティスト」と命名し、毎年認定証を発行している。結局、付加価値を作り出せるのは、最後は人であり、人が大事になる。

―― 今後の事業展開は。
 海藤 今の時代、すべてを自前でやっていくには人材や開発スピードなどの観点からも無理がある。自分たちにない技術や知見を持つ企業と積極的にアライアンスを進めていく。AI(人工知能)や遠隔操作技術に秀でるコアコンセプト・テクノロジー(東京都豊島区)社とは1年以上前から提携させていただいている。


(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2020年10月8日号10面 掲載)

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