商業施設新聞
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No.775

コロナ禍の遊び場


岡田光

2020/9/29

 今年8歳になった甥っ子がある日、静岡県磐田市にある母の実家に一通の手紙を送った。その手紙は「コロナのせいで、プールにも行けない毎日です。今年はそっちに行って、遠州灘で泳ぐこともできないので、せめてメロンだけでも送って下さい」と図々しい内容であった。母の実家は代々続くメロン農家で、筆者も中学生のころ、夏休みを利用して亡き先代の温室を手伝ったものだ。今は先代の息子が跡を継いでいるが、今回の甥っ子のわがままにも快く応じ、筆者の家族の分までメロンを送ってくれた。

 筆者が8歳のころは、毎年夏休みに母の実家を家族で訪れ、遠州灘の波を見ながら泳いだり、砂浜を駆け回ったりし、先代が漁船を持っていたため、小舟で釣りを楽しんだこともある。時には浜名湖で浮き輪を付けてアサリやシジミを採り、先代と2人で静岡市の「東海大学海洋科学博物館」に行き、大きな魚にびっくりしたことも記憶している。実家暮らしが長かった筆者にとって、まさに“第2の故郷”と言える。しかし、今年の夏は、新型コロナウイルス感染症の拡大が危惧され、親戚に高齢者も多いことから、故郷に帰ることはできなかった。

 筆者の家族はいい方だ。2歳の息子はまだ幼いので、遊ぶ場所も「トット・ガーデン」や「キッズユーエスランド」など、少ないながらも確保されている。しかし、甥っ子のような小学生以上ともなると、コロナ禍の現状では、子供の遊び場を閉鎖している商業施設は多い。あのイオンモール(株)ですら、9月17日に増床リニューアルグランドオープンした「イオンモール高知」において、子供の遊び場は未完成のままだ。開業前の記者会見で「(子供の遊び場は)社内で検討中」と説明したが、ファミリー層をターゲットにしているイオンモールがこれでいいのかと疑問に思った。イオンモールのような大手デベロッパーだからこそ取り組んでほしいとも思う。

イオンモール高知ではこの場所に遊び場を作る予定
イオンモール高知では
この場所に遊び場を作る予定
 確かに、不特定多数の子供が集まる遊び場は、新型コロナウイルス感染症のリスクは高まる。だからと言って、閉鎖したままでは子供が商業施設に来る理由づけがなくなってしまう。あの遊具で遊べるから、あの空間で走り回れるから、子供たちは商業施設を訪れるのだ。決して大人が買い物に行くから、それについてきたという理由だけではない。

 
ららぽーと愛知東郷に設けられた「はぐくむゾーン」
ららぽーと愛知東郷に設けられた
「はぐくむゾーン」
 「ワクチンや治療薬がない現状で、遊び場を設ければ、感染を防ぐことはできない」という意見もあるだろう。ならば視点を変えてもらいたい。例えば、三井不動産(株)が9月14日に開業した「三井ショッピングパーク ららぽーと愛知東郷」。この施設も小さい子供を連れたファミリーをメーンターゲットに据えているが、その子育てファミリー向けに、3階に「はぐくむゾーン」を設置している。はぐくむゾーンは「ヤマハミュージックレッスン」「森のキッズeクラブ」「レゴスクール」といった教室・教育関係の店舗を片側に集積しており、その対面となる中央に「サンマルクカフェ」を設置。さらに、サンマルクカフェの近くには「エディオン」も出店している。

 こうすることで、子供は教室・教育関係の店舗で学びを受け、お母さんはカフェで子供が頑張る姿を眺めながら一服する。教室では時間も決まっているので、お母さんは別の買い物に時間を割くこともできる。お父さんは近くのエディオンで家電製品をじっくり見られる。遊び場と聞くと子供を見るという視点が外せないが、この仕組みなら安心して大人も休んだり、買い物したりできる。新型コロナウイルス感染症の収束がまだ見えない現状ではあるが、商業施設でファミリーをターゲットにするなら、コロナ禍にあっても子供を楽しませる施設でなければならない。三井不動産はもちろんのこと、イオンモールのさらなる奮闘に期待したい。
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