電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第392回

東芝デバイス&ストレージ(株) パワーデバイス技師長 高下正勝氏


新構造SiCの新製品を投入
パワーは年10%以上の成長目指す

2020/9/18

東芝デバイス&ストレージ(株) パワーデバイス技師長 高下正勝氏
 東芝デバイス&ストレージ(株)は、パワーエレクトロニクス分野を中心に、ディスクリートビジネスの拡大を図る。特にSiパワーMOS分野では低電圧や中・高耐圧品のラインアップ拡充を強化する。さらに次世代半導体のSiCなどの投資も拡大、事業拡大の起爆剤にする。新型コロナ禍の不透明な状況下、足元の事業環境や中長期的な事業戦略をパワーデバイス技師長の高下正勝氏に聞いた。

―― 現在のパワーデバイスのビジネス状況から。
 高下 新型コロナの影響で車載や産業機器用途が伸び悩んでいる。しかし、EVやHVなどエコカー向け需要は堅調だ。また、巣ごもり需要の恩恵で、高効率化が求められるサーバー用電源向けが伸長している。

―― 主力製品は。
 高下 特に200V以下の低電圧MOSFETについて、パワステなど車載用途を中心にラインアップを強化している。同分野の日系自動車向け市場ではトップクラスのシェアを誇る。20年2月には最新の第10世代品を投入し、高い評価を得ている。さらには600V以上の高耐圧品にも注力しており、最新の第6世代品では業界最高性能を持った使いやすい製品として産業機器向け電源に採用されている。
 また、車載用IGBTも立ち上がってきた。現在のところ特定顧客向けが多いが、RC-IGBTも含めて強化する。19年12月に投入したIH向けのディスクリートパッケージのIGBTも拡大している。当社独自のハイパワーのIEGTもある。今のところ社内の送配電インフラ向けがメーンだ。
 これらパワーデバイスは搭載されるシステムのキーデバイスとなり、その製品の付加価値の源泉にもなるため、引き続き強化を図る。

―― 今後の開発ロードマップは。
 高下 低電圧MOSFETでは当社独自の「フィールドプレート」技術を展開し、さらに高精度のプロセス技術を磨く。複雑なトレンチ構造での電界を制御し、低抵抗の製品開発を続ける。まずは第10世代のラインアップを拡大する。現状では80Vならびに100V品だが、40Vや150V品も追加する。ここではパッケージ技術も重要になる。Siチップと同等サイズのCu板を貼り付けて、電極接合も最適化したCuクリップなど、当社ならではの技術が活かされている。
 高耐圧品ではディープトレンチ(DT)方式のスーパージャンクション(SJ)型MOSFETが強みであり、新製品の投入を計画している。

―― 今春からは「電源回路ライブラリー」も発足しました。狙いは。
 高下 パワーデバイスをどう作るかという観点から従来ビジネスを見つめ直した。行きついたのが、ユーザーが使いやすいデバイスとしていかに付加価値を提供できるかという結論だった。今後はソフト面の強化も重要になる。電源回路のレファレンスボードを提供し、ツールとして使っていただく。当社独自のサポートを展開していきたい。

―― 工場でのAI活用にも積極的です。
 高下 東芝本体とも連携してAI技術を使った解析システムを製造拠点で展開しており、歩留まり改善や製造工程の効率化に役立てている。デバイスの製造技術だけでなく、AI技術をはじめ、高い水準のデジタル技術を保有していることも東芝グループの強みだと考えている。

―― SiCにも注力していますね。
 高下 すでに新構造のSiC-MOSFETを開発し、製品化を計画している。1200Vの高耐圧で産業機器の電源用途を念頭に入れている。既存のウエハー欠陥レベルを考えたら、この構造がベストだ。まだまだ高価なのは承知している。しかし、周辺部品や冷却構造などの小型化にもつながり、品質面を含めたトータルコストを考えると、採用される事例が増えるだろうとみている。従来構造のSiC-SBDやSiC-MOSFETの製品ラインアップも拡充する。新世代品を次々投入する。姫路半導体工場では6インチ対応ラインも稼働済みであり、今後の新規需要の立ち上げに備えている。

―― GaNなど新たなパワーデバイスも開発中です。
 高下 要素技術的な分野では、東芝本体の研究開発部門と当社の開発部門がタッグを組んで取り組んでいる。材料メーカーらとも共同で開発を加速している。産業用高速スイッチング電源として、まずは考えている。劇的に小型化が図れるとみており、数年以内には投入したい。

―― 今後のパワーデバイスの成長予測は。
 高下 市場成長の倍以上となる年率10%以上の成長を目指す。現在ディスクリートの売上規模は1500億円程度(19年度)で、このうちパワーデバイスは約6割を占める。今年度は新型コロナウイルスの影響は避けられないが、中長期的にはパワーデバイスをコアに2000億円まで拡大させたい。

―― 300mmのパイロットライン導入も決めました。
 高下 加賀東芝エレクトロニクスに試作ラインを設置する方向だ。20年度中には着手し、21年度中の稼働を目指す。300mmでのパワーデバイスの生産性やプロセスの確立を狙う。300mmの量産については議論を進めている段階で、具体的な場所や建設時期は決まっていない。


(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2020年9月17日号3面 掲載)

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