電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞・情報紙誌のご案内出版物のご案内広告掲載のご案内セミナー/イベントのご案内
第394回

マスクもつけない男、トランプ氏はまたも中国に徹底抗戦を叫ぶ


~中国製造2025に対抗する半導体強化策には何と3兆円投入のサプライズ~

2020/8/7

 新型コロナウイルスで世界が大きく揺れているなかにあって、あのマスクをつけない男、トランプ氏はまたも大声で机を叩いて、こう言い放った。

 「テキサス州ヒューストンにある中国の総領事館の閉鎖を求める。もうこれ以上、中国に勝手なことはやらせない。そしてまた、香港の自治を侵害していることに対抗して、中国の金融機関への制裁を可能にする香港自治法も発令する。民主的に戦う人たちを支援するのだ」

 米中対立はいよいよ新たな局面に入ってきた。一国二制度を事実上形骸化させる香港国家安全維持法が中国により強引に施行されてしまった。米国をはじめとする西側諸国はある種の恐れをもってこの行動を見ていた。この香港に続いて中国は、何と水面下で台湾を併合する計画も進めているというのだ。これに驚いた米国政府は、台湾のTSMCの新工場を米国に誘致することを決めた。

いつも吠えまくるトランプ大統領(朝日新聞社提供)
いつも吠えまくるトランプ大統領
(朝日新聞社提供)
 中国のウイグル弾圧に対してもトランプ氏は手厳しい。7月20日、ウイグル自治区の少数民族弾圧に関わったとして、衣料品や家電などを手がける中国企業11社に禁輸措置を発動すると発表したのだ。Appleやファーウェイにスマホ部品を共有するオーフィルムテックなど11社の輸出申請は事実上却下されてしまった。

 すでに米国商務省は2019年10月と2020年6月に、監視カメラのハイクビジョンなど37社を禁輸措置のリストに加えている。もちろん中国は、こうした一連の行動に対し内政干渉だとして激しく反発している。対抗措置として7月24日、中国外務省は四川省成都にある米国の総領事館を閉鎖するように通知した。もうどうにも止まらない、というのが現状における米中関係だと言えるだろう。

 しかしながら、今回の新型コロナウイルス戦争とも言うべき世界的な蔓延状況は、米国を多く痛めつける一方で、中国の傷は少ない。国際通貨基金(IMF)の見通しによれば、2020年の世界経済全体の成長率はマイナス4.9%と予測し、4月時点から1.9ポイントさらに下方修正した。米国の成長率はこの平均値よりはるかに低く、マイナス8.0%となる見通しである。第2次世界大戦の特需が消えた1946年以来、実に74年ぶりの大幅なマイナス成長となってしまう。

 これに対して中国は1.0%のプラス成長を維持するという。確かに武漢ウイルスで当初はパニック状態となったものの、あっという間に収束に向かい、今や一番傷の少ない大国と言ってよいだろう。かつて巨大帝国を築いた英国に至っては、前年比10.2%減という有様であり、1709年以来、311年ぶりという記録的なマイナス成長となっているのだ。

 ここにきてトランプ氏率いる米国は反中政策を強化する一方であるが、中国はこれをどこ吹く風とばかりに、相変わらず大型の補助金をばらまいて、中国製造2025という国家ぐるみの成長産業の育成に注力している。ちなみに、2020年の世界の半導体製造装置投資額は前年比6%増の約7兆円が見込まれている。地域別に見れば1位は中国であり、約2兆円を投入、2位は台湾であり1.6兆円を投入、3位は韓国であり1兆3000億円を投じる見込みである。残念ながら我が国日本は5位の8000億円弱となりそうだ。

 中国政府は半導体強化策として新たな第2フェーズを構えており、2兆5000億円程度の半導体強化資金を投入することを決めている。ところがどっこい、もはや米国も黙ってはいない。米国半導体工業会(SIA)が中心となって、米国半導体の強化のために3兆円投入を通す法案が成立する見込みなのだ。本気で中国を上回るすさまじい半導体強化作戦を実行していく考えであり、もう後には引けないという。あわせて、そしてまた軍事同盟で深く結びついている日本との連携も強化していく考えであり、米国の半導体関連企業が日本に最先端工場を作るというプランも検討されているようだ。

 米中貿易戦争は終わらない。イギリスもこれに参戦を決めた。そしてファーウェイの調達をやめることになった。その代替として、日本のNECや富士通に5Gの基地局の設備を協力してほしいと要請してきた。この間、何回も指摘してきたことであるが、米中貿易戦争は結果的に日本に追い風が吹く。この風を自分のものにしなければ、今度こそ日本は世界の先端技術の進展から取り残されてしまうだろう。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
サイト内検索