商業施設新聞
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第240回

東急不動産SCマネジメント(株) 運営本部 第3運営部 みのおキューズモール 総支配人 志村敦史氏


デイリー中心のアウトモールへ
少人数のコミュニティ形成に尽力

2020/7/28

東急不動産SCマネジメント(株) 運営本部 第3運営部 みのおキューズモール 総支配人 志村敦史氏
 東急不動産SCマネジメント(株)が運営・管理する商業施設「みのおキューズモール」は、2003年に開業して以来、最大規模となるリニューアルを実施。新型コロナウイルスの影響による休館もあったが、5月21日から営業を再開して、新店をオープンした。大々的なPR活動は自粛しているが、総支配人の志村敦史氏は「以前ご利用いただいたお客様が戻っているのに加え、新規のお客様も来店が増えている」と手応えを感じている。リニューアルオープンした同施設について、志村総支配人に話を聞いた。

―― リニューアルに至った経緯から。
 志村 当施設は03年に開業し、小商圏ではあるものの売り上げは順調に推移したが、「EXPOCITY」の開業や「イオンモール茨木」の増床リニューアル、さらに周辺にスーパーマーケットが相次いで開店したことで、伸びが鈍化した。
 ちょうど近隣に北大阪急行電鉄の新駅「箕面萱野駅」が設置されることもあり、1ランク上の商業施設を目指そうと考えた。具体的には、アウトモールや自然豊かな環境を生かし、リニューアルコンセプトは人々のつどい・交流を示す「Gather」と、地域の方々に愛され、共に育っていくという想いの「Together」の2つの意味を込めた「To・gather」を掲げた。加えて、新駅頼みのMDや施設コンセプトを組むのではなく、エリア特性や駅前立地を考慮し、デイリー商材を中心とするMD構成を組んだ。

―― ポイントは。
肉、魚、野菜の専門店が出店する「Q
肉、魚、野菜の専門店が出店する
「Q'sマーケット」
 志村 新設したセンター棟の2階のデッキ近くに、デイリー性の高い業種として、ベーカリーやドラッグストアを配置した。また、不足業種として、家電量販店、書店、ベビー用品店などを新たに誘致している。さらに、立地する箕面市は富裕層が多く、周辺に「いかり」や「阪急オアシス」も出店しているため、スーパーマーケットは「イオンスタイル」に屋号を変更、またそのイオンスタイルの近隣には肉、魚、野菜の専門店を揃えた「Q'sマーケット」も新設し、食のグレードアップを図っている。店舗数は約100店から110店に増加した。

―― 設備面は。
 志村 今回のリニューアルでは、日常的にヒトが訪れやすい場所をテーマに掲げており、センター棟の2階に約650席を擁する大型フードコートを新たに設けた。フードコート内にはママ会、ワークショップ、講演会、座談会に利用できる調理器具を備えた貸出レンタルルーム「Q'sリビング」も併設している。
 平日の昼間はヤングファミリー層の来店が多いことから、イースト棟の1階に、雨の日でも子供を遊ばせることができる屋内型施設「Q'sランド」を整備した。そのほか、地域の方の発表会や音楽ステージとして利用できる「Q'sステージ」も設けている。

―― 顧客層について。
 志村 リニューアル前はヤングファミリー層や50~60代の方が中心だったが、リニューアル後はこれらの層に加え、10~20代の来店が急増している。近隣に学校が多いとはいえ、この結果は予想外だ。また、リニューアル後の駐車場利用台数は増えていないが、来館者数は増加傾向にあり、以前ご利用いただいた足元商圏のお客様が戻ってきているのも感じる。今後は新駅の設置に伴い、バスターミナルが併設される予定であるため、学生も含めて、来館者数はさらに増えるだろう。

―― 新駅の効果は。
 志村 大阪市内など鉄道沿線の広域集客はそこまで期待はしていないが、箕面市や隣接するエリアの東西の駅利用者の流入人口が増えることから、さらにデイリー性が高くなるため、足元商圏をしっかり押さえていく。リニューアル後も、商圏は東西および南西側の3~5km圏を設定しており、足元人口だけで14万人を数える。

―― コロナへの対抗策について。
 志村 大規模な集客企画はすぐにできる状況ではないが、小さなコミュニティは増やしていきたい。当施設では「ホッププロジェクト」を始めており、これは屋外の喫煙所を改良して、ビールの原料となるホップを育てている。20年秋口には収穫できる見通しで、10人程度の少人数で収穫体験を楽しむ予定であり、こうした企画を施設各所で行っていきたい。

―― 今後の展望を。
 志村 20年秋をめどに、イースト2棟の1階にアウトドア総合ブランドの「mont-bell」をオープンする予定のほか、当施設の敷地内には一級河川の「千里川」が流れており、千里川で遊んだ子供向けに、足洗い場も新設した。今後もこうした自然を生かせるテナントや設備を導入し、アウトモールの良さを強調していきたい。


(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2352号(2020年7月7日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.335

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