商業施設新聞
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No.765

商店街と共存するGMS


岡田 光

2020/7/21

 6月某日、イオンリテール(株)から届いた1通のニュースリリースを見て、「ようやく決まったか」と、思わず呟いてしまった。そのニュースは、京都市伏見区にある「イオン伏見店」を一時休業し、建て替えるという内容であった。「ニチイ」「サティ」「イオン」と変遷した同店は、総合スーパー(GMS)らしからぬ品揃えが好評で、徒歩5分の距離にある我が家も様々なシーンで利用する。これまで幾度となく「GMSには何でもあるが、欲しいものが何もない」と揶揄されてきたが、イオン伏見店は欲しいものが何でもある、優秀なGMSだと思う。

建て替えが決まった「イオン伏見店」
建て替えが決まった「イオン伏見店」
 筆者の住む地域には、物販・飲食・サービス店が軒を連ねた「伏見大手筋商店街」があり、同商店街と隣接するように「納屋町商店街」や「風呂屋町商店街」が立地する。これだけ商店街が集まるのも稀であるが、ここにイオン伏見店があり、以前は「長崎屋京都店」や「西友伏見桃山店」も営業していた。しかし、長崎屋京都店は閉店してその跡地には分譲マンションができ、西友伏見桃山店も閉店し、その跡地に(株)ユナイテッドベジーズが「プラザ大手筋」を再開業したものの、結局、2019年8月に閉店した。その結果、伏見大手筋商店街周辺で食料品と非食料品を取り扱うGMS業態は、イオン伏見店のみとなった。

 イオン伏見店が生き残った要因は3つある。1つは、食料品の値段が全体的に安いことだ。現在、同店の周辺には万代、コープ、フレスコ、イズミヤといったスーパーマーケットが営業中だが、消費者目線で客観的に見ても、イオン伏見店の鮮魚や精肉の値段は安く、さすが全国チェーンと感心する。加えて、野菜を店頭で安売りする日もあり、その日は入り口が買い物客でごった返す。イオン伏見店が立地する地域は、ファミリー層だけでなく、年金暮らしの高齢者も多く住んでおり、安値が顧客の足を止め、店内へと誘う役割を果たす。

 2つ目の要因は入居するテナントだ。伏見大手筋商店街には様々な店舗が存在するが、100円均一ショップは、前述の「プラザ大手筋」にテナントとして入居していた「ダイソー」と、イオン伏見店に同じくテナントとして入居する「キャンドゥ」の2店だけであった。ダイソーが閉店したことで、100円均一ショップはキャンドゥのみとなってしまったが、それが逆に若年層を集客する好結果を生んでいる。個人的には、建て替え後の新施設にも是非、100円均一ショップをテナントとして導入してもらいたい。

 そして、最後の要因が非食品フロアの存在だ。ここ数年、GMSは服飾や雑貨などの非食品フロアが苦戦して窮地に追い込まれているが、イオン伏見店に限って言えば、非食品フロアの売り上げが全体の底上げをしていると感じる。例えば、4階にある直営の書店売り場。規模も品揃えも特筆すべき点はないが、筆者が家族で来店すると、妻と2歳の息子は、必ず書店売り場に足を運ぶ。その理由を聞くと、「伏見大手筋商店街にも書店はあるけど、幼児向けの絵本やDVDは、ここにしか置いていないから」と言う。そこで初めて気づいた、イオン伏見店がどのようにして売り場を作ってきたのかを。同店は近隣の商店街に出店した店舗や、その店舗の品揃えをつぶさに観察して、地域住民に必要な売り場を作ってきたのだ。商店街と共存するGMS、これこそ地域密着型GMSの模範と言えるだろう。

 イオン伏見店は筆者が生まれた1978年に開店し、42年間の長きにわたって、地域住民に愛されてきた。建て替え後も、地域住民に、商店街に欠かせないGMSとして、その存在感をより高めてもらいたい。
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