週2回の恒例行事になっている
「イトーヨーカドー春熙店」の朝礼
弊社が加入している流通報道記者会の主催で、7月4日~7月8日に中国の蘇州と成都における生の流通小売の現場に触れる「2012年 中国流通視察セミナー」が敢行され、これに参加した。中国本土に行くのは、以前所属していた「半導体産業新聞」編集部時代の01年に北京へ出張して以来で、あの頃は北京での五輪開催も決まり、都市部は大型再開発の前夜が容易に想像できるほど、建物の取り壊しが進んでいた。海外出張そのものも、06年にソウル出張をして以来だった。そのようなわけで、今回の海外出張にあたり、出国審査を通過し、搭乗口へと向かう、あの何とも言えない“わくわく感”を久しぶりに味わったのだった。
日本人は海外に行くと、騙されたり、まがい物を売りつけられたりと、いわゆる「カモ」にされるとよく言われる。何を隠そう、若い時分には海外を色々と巡った経験があり、怪しげなそういう輩には毅然とした態度で対応できる自信があった。だが、どこか自信なさげに映るのか、観光スポットを訪れた際に、結構しつこく付きまとわれた。かつては睨み返すだけで寄って来なかったという自信があっけなく崩れたのだった。
そして中国である。最近ではアップルとのiPadの登録商標で和解に持ち込むなどその強さが際立つ。実際に現地に行ってみると、中国人の大きな声に面食らい、我の強さに後ずさり気味の自分を感じた。日本の若い男子が草食系と揶揄されるが、いつの間にか自分も草食化していたのか。
一方で、現地で出会った日本人の方は、とても逞しく見えた。四川省成都市は、人口が1400万人と言われるが、日本人は僅かに百数十人という。そうした中でも、ビジネスを立ち上げてきた、またはこれから本格化しようという自信に裏打ちされた表情、佇まいに、ここで生きるための鎧をまとっているかのごとく、強さを感じた。まさに“中国系”男子なのだ。
視察したイトーヨーカドー春熙店では、週2回、朝8時に必ず行われる全体朝礼がある。まさに日本式。全体朝礼の狙いは日本人なら理解できるが、中国人に理解してもらえるまでには大変な苦労があったと思われた。そのあたりを成都伊藤洋華堂有限公司の今井副董事長に尋ねると「そうでもなかったですよ」と、こともなげに言うが、やり抜こうとする意志の強さがなければ、ここまでできないはずだ。
今回の視察セミナーでガイドを務めた現地の中国人ガイドは、我々が帰国する際の挨拶で、「成都にはまだまだ言葉が分からなくても頑張っている日本人がたくさんいるのです。そういう人達をどんどんニュースにしてあげて下さい」と訴えた。そして「そのために、もう一度成都に来て下さい」とのアピールも忘れなかった。