高付加価値な産業機器用途向け小型精密モーターで、5期連続の増収増益を見せているシチズン千葉精密(株)(千葉県八千代市吉橋1811-3、Tel.047-458-7935)。1979年の創業当初から小型精密モーター専業メーカーとして名を馳せてきた同社は、光ディスク全盛期には光ディスクスピンドルモーターでデファクトスタンダードになるなど、時代の先端にはいつも同社の小型精密モーターがあったと言っても過言ではない。
現在、同社を率いるのは代表取締役社長の中川康洋氏である。シチズングループにおいて精機事業、研究開発、水晶事業、米国販社マーケティングなど幅広いフィールドで経験を積んだ後、5年前から同社経営者の任にある。中川氏に同社の強み、今後の展望、活動指針など話をお聞きした。
―― 貴社の概要から。
中川 モーター、減速機、ドライバー、リニアアクチュエーター、ガルバノスキャナー(GL)など高付加価値な小型精密モーターおよび周辺装置の開発・製造・販売に特化した事業を展開している。事業領域は、半導体・FPD関連装置市場、医療・臨床・美容機器市場、計測・分析機器市場、FA/ロボット市場など幅広い。
―― 貴社の小型精密モーター製品群の強みは。
中川 競争の少ないニッチ市場でお客様と二人三脚の独自性の高い製品展開が図れている点にあるだろう。全社売上高の75%は納品先トップ10社が占めており、こうしたお客様は当社を自社のモーター開発部門と位置づけてくださっているほどの信頼関係にある。ちなみに、当社の小型精密コアレスモーターは、回転モーター、限定角度内を揺動するGL、高精度な位置決めを可能とする直動モーターの大きく3つに分類できる。これら各モーター製品における当社ならではの特徴は、高精度な位置決め、高速回転、静音・低振動・低発熱にあると自負している。
―― 採用事例は。
中川 例えば、半導体・FPD露光装置向けでのサブミクロン単位の位置決め用途などは代表例だ。また、3Dマッピングなどに活用される3D―LiDARや、印字機など産業用マーキング機器向けレーザーマーカーなどにはGL/GL用ミラーが採用されている。ほかにも、感染症などのパンデミック時にも利用される電動ファン付き医療マスクなど枚挙にいとまがない。最近では、デンタルオフィスの義歯加工機といった医療分野、ロボット分野などで欧米メーカーでの採用事例も増えてきており、海外比率が4割近くまで高まりつつある。
―― 医療やロボット向けはどのように伸ばしていくか。
中川 医療機器用途では従来から、レーザーで表層と深さを測れる利点からOCT(眼底検査)、細胞構造まで見られる共焦点顕微鏡などへGLを中心に供給してきた。最新事例では、オートクレイブ対応医療機器向けブラシレスモーターを独自開発した。高温・高湿度・高圧力に耐え得る材質・機構を採用し、数千サイクルの減菌処理を可能とする製品だ。
一方、ロボット分野向けに、WDS(波動歯車減速機一体型モーターシステム)を開発した。WDSにより、人の動きに追従した細やかな制御ができるパワーアシストスーツが実現される。さらに遠隔操作用外科手術用ロボットへの応用も注目されている。
―― 新市場開拓の秘訣は。
中川 実は当社に赴任した当初は、各分野のスペシャリストによる個人商店の集まりのような会社であった。そこで、社内のつながりと情報共有の体制を強くすべく、例えばお客様からの引き合いは、営業、マーケティングだけでなく開発、製造を加えた検討会を毎週開催している。情報共有することで、販促活動だけでなく製品開発や生産活動の指針が明確になり、かつ特定市場の発見・開拓にもつながる。
―― 生産拠点は。
中川 主力拠点は国内の本社工場と第2工場(千葉県八千代市吉橋)であり、高付加価値品を全量生産している。一方、大量生産品の生産は中国工場(東莞市)で手がけている。どちらもフル稼働の状況にあり、生産性向上を図る設備導入を進めている。
―― 経営哲学および今後の展望を。
中川 「つながる、学ぶ、活かす」。この言葉に尽きる。お客様、サプライチェーン、販売パートナー、社員同士が確実につながる。収集した情報を整理・分析し、必要とする社員・関係者と共有して学ぶ。有力な情報は製品・サービス開発テーマとして活かす。今後も国内外に視野を広げ、全社一丸となって特定市場でデファクトスタンダード創りを目指していく。
(聞き手・高澤里美記者)
(本紙2020年4月2日号10面 掲載)