電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第374回

ソニーの画像センサーはファーウェイのスマホ16個使いでさらに爆裂上昇


~コロナウイルスの大騒動下でスマホはマイナス成長、これを跳ね返す~

2020/3/13

 「世界経済がどういう展開になっても、やはり日本を代表する企業はソニーとトヨタということになるだろう。もちろん、ブランドという点でも世界のすべての人々に知られている。そしてまた、コロナウイルスの感染が猛威を振るっている中にあって、この2社はひるむことなく突き進んでいる」

 ため息をつきながらこう語るのは、いまや世界的な半導体アナリストとして知られる南川明氏である。南川氏によれば、中国の存在感は相変わらず大きく、ここがストップしてしまうとグローバル経済に与える影響は限りなく大きいという。そしてまた、スマホの世界も中国ファーウェイがアップルを抜いて第2位に躍進し、トップのサムスンの王座を狙う勢いであることは否定できない事実だともいう。

 さて、スマホの世界であるが、2017年をピークに出荷台数は伸びなくなっている。さらに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、20年のスマートフォン出荷はマイナス成長になってしまう公算が大きくなってきた。なぜならば、スマホを筆頭とするモバイルフォンの約70%は中国本土で作られているからである。中国の供給体制の回復には、少なくとも6月まではかかるとの見通しが強い。もちろん、下期からは次世代通信規格の5Gが一気に出てきて、全スマホ出荷台数(2020年は約14億台で微減)の10~20%くらいは5Gタイプになるとの予想もある。

 ところで、コロナウイルスでメタメタになっている中にあって、ソニーは大阪オフィスを開設し、CMOSイメージセンサーの設計開発能力強化を図ることになった。ソニーとしては関西で初めてのCMOSイメージセンサー設計開発拠点となり、20年4月1日の設立を予定する。大阪オフィスの開設により、ソニーは関西における優秀なアナログ設計エンジニア、ロジック設計エンジニアなどの人材獲得に成功するだろう。今後も市場拡大が見込まれるスマホなどのモバイル機器や、IoT対応のエコカー/自動運転向けのセンサー設計開発能力を強化することになるのは間違いない。

 「ソニーは半導体生産において、20年3月期に1兆900億円を売り上げて国内トップの地位を固めつつある。将来的には世界ランキングでも上位に行くだろう。33個の画像センサーを搭載した自動運転の試作車も作っており、車載についても高シェアを取りに行くだろう」

 これは、ある著名な証券アナリストが微笑を浮かべながら言った言葉である。コロナウイルス問題で揺れる世界経済の中にあって、20年の世界半導体市場は10%以上伸びると言われていたが、これを下方修正する予想が増え始めている。半導体生産におけるバッドニュースも飛び交っている。

 それにしても、ソニーのCMOSイメージセンサーのパワーは止まらない。中国における監視カメラマーケットはいまや現状の3~4倍となる6億台までいくと言われている。これらの多くがソニー製のCMOSイメージセンサーを使っている。もっと驚くべきことは、中国ファーウェイの次の次のスマホについては、CMOSセンサー16個使いが予定されているとの話もあり、こうなればソニー様のご天下がやってくるのだ。

 このファーウェイの情報は、半導体アナリストとして多くの年月を重ねてきたある友人の非公式なコメントである。筆者は、ファーウェイは次の機種でCMOSイメージセンサーを7個使いすることまでは知っていたが、なんとここ1年くらいの間に16個使いを考えているとは夢にも思わなかった。

2020~21年もニッポン半導体の柱はソニーが担っている。(セミコンジャパンのソニーブース)
2020~21年もニッポン半導体の柱はソニーが担っている。(セミコンジャパンのソニーブース)
 もちろん、こうしたファーウェイの動きに対し、スマホトップのサムスンや3位のアップル、さらにはシャオミー、オッポなどの中国勢も追随するだろう。そうなれば、CMOSイメージセンサーで圧倒的なシェアを持ち、技術開発でも抜きん出ているソニー製品がさらに使われていくことは間違いない。ソニー自身は、近い将来に世界におけるCMOSイメージセンサーの市場シェアを現状の50%から60%に上げていきたいとしている。しかして、スマホの多眼化が加速度的に進めば、もっと大きなシェアをソニーが獲得することは決して夢ではない。

 コロナウイルス大騒動の中で、ソニーはもう一方の柱であるプレイステーション5の価格をどう付けようか、と思い悩んでいる。しかして、20~21年にかけてニッポン半導体の頼りになる柱は、やはり現状ではソニーと言うべきである。

 (ソニーのCMOSイメージセンサーに関することを深くお知りになりたい方は、泉谷渉著、産業タイムズ社発行『伝説 ソニーの半導体』をお読みになることをお勧めします。定価3,500円+税です。)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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