新型コロナウイルスによる肺炎が収束の兆しを見せていない。これを書いている2月10日現在も感染者数は増え続けており、中国国内のみならず日本など各国においても増加している。各国政府は懸命に対処しているが、収束に向かっていないのが現状だ。
影響は経済面においても大きく出ている。中国国内では武漢市をはじめ、様々な都市で移動制限がかかっており、市民生活への支障が出てきている。また工場や店舗などの職場においても、当局の要請あるいは自主的に出勤停止の措置が取られているところが多く、工場の停止は世界的なサプライチェーンにまで影響を及ぼしている。この影響は中国本土に進出している日系企業についても例外ではなく、ユニクロは中国本土320店を全店一時休業、ラーメン店を展開する重光産業は705店のうち615店を休業する状況になっている。
日本国内でも影響は甚大だ。中国本土で団体観光客の出国が制限されたことを受け、日本国内に来る中国人観光客が激減し、春節の需要を見込んでいたホテル業界やインバウンド産業は大きな打撃を受けている。特に京都や心斎橋などの外国人客が多かった地域では、露骨に人通りに影響が出ているという。また物資の面では、マスクが店頭から姿を消すことになった。国内需要が飛躍的に高まっているのと同時に、日本国内でマスクを大量に買って中国に持ち出し転売するなどといった買い占め行為が横行しているようだ。
また、経済面以外でも大きな影響をもたらしているものがある。それはデマやフェイクニュースといった情報だ。ネット上には新型肺炎の治療・予防法と称して、怪しげな民間療法の情報が横行しており、場合によっては健康被害が出るような状況になっている。ウイルスの拡散を警戒するあまり、中国人やアジア人に対する差別的な扱いが出ているところもあるようだ。また様々な被害や影響を誇張しすぎるタイプのデマも横行している。中国人観光客が減り京都のホテルがこんなに安くなっているといって、1泊数百円になっている予約画面のキャプチャ画像を筆者は見たが、実際のところそれは以前からある特別プランの料金であり、今回の騒動とは全く無関係のものであった。
今回の騒動がいつ収束するかは誰にもわからないが、人・モノ・金・情報の動きがかつてないほどに国際化した現代の世界では、一度疫病が出現すると、その影響は健康面ではなく社会の根本的な部分にまで及ぶことが浮き彫りにされたようだ。こうした中で我々にできることはわずかしかないだろうが、せめて正確な情報を伝えるように心がけていきたい。