電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第370回

FLOSFIAの酸化ガリウムのパワーデバイスは新時代を切り開く


~SiCをはるかに凌ぐ超低損失が武器、2020年中に量産開始~

2020/2/14

 「酸化ガリウム(α-Ga2O3)を用いたダイオード試作に成功し、世界トップデータを実現した。なんと、次世代パワーデバイスの本命と言われるSiCに対し、オン抵抗を86%も低減する世界トップデータを実現したのだ。チップサイズも小さく、同一面積で大電流が流れるわけだから、SiCを駆逐するだけの条件は完璧に備えている。2020年中には、一番最初のタイプであるショットキーバリアダイオードの量産が開始されるのだ」

酸化ガリウムのパワーデバイスを持つ井川拓人氏(FLOSFIA)
酸化ガリウムのパワーデバイスを持つ
井川拓人氏(FLOSFIA)
 かなりきっぱりとした口調でこう語るのは、(株)FLOSFIA(フロスフィア、京都市西京区御陵大原1-29)という電子デバイスベンチャーにあって、営業部長の任にある井川拓人氏である。

 井川氏は2010年に京都大学工学部を卒業し、同年に同大学院に進み、酸化ガリウムで超有名な藤田静雄研究室において、ミストCVD技術開発に従事する。在学中の2011年には、FLOSFIA設立のファウンダーとして人羅俊実社長とともに事業運営に参画する。京都大学を出てすぐ伊藤忠商事に入社し、オーストラリア駐在を経て2017年1月からFLOSFIAに復帰し、営業部長に就任した。

 「FLOSFIAの基本コンセプトは、次世代半導体材料である酸化ガリウムデバイスの開発・製造がメーンである。また一方で、成膜合成技術のプラットフォームであるミストドライ法による新たな電子材料、産業材料の開発・製造も進めている。京都大学が生み出したベンチャーとして、桂キャンパスに隣接して拠点を構えており、10年目を迎えるところだ。そして、ついにブレイクの時を迎えた」(井川氏)

 FLOSFIAの資本金等は32億円を超えており、有力な出資が相次いでいる。デンソー、安川電機、三菱重工業、ブラザー工業は、株主であり、ユーザーでもあるという関係。その他にもJSR、三井金属鉱業、フジミインコーポレーテッドなども株主となっている。そしてまたすごいのは、役員構成である。取締役CTOにはパワーデバイスのエキスパートである四戸孝氏がおり、社外取締役としては京セラの社長・会長、ソシオネクストの会長兼CEOを歴任してきた西口泰夫氏など、錚々たるメンバーが顔をそろえている。

 「2025年のパワーデバイスの世界市場は3兆5000億円を超えてくるだろう。当社が初期のターゲットとして見込む市場は約3000億円はあると見ている。もちろん、SiC、GaNとの闘いになるが、真空を使わないで作る技術であるミストドライ法は、圧倒的な低コストを実現する。さらにサファイアの上に作り込むのであるから、コストダウンは間違いない。FLOSFIAは酸化ガリウムの中でも新材料ともいうべきα-Ga2O3を作り上げることに成功したことが、大きな第一歩であった」(井川氏)

 世界の化合物系パワーの状況を見れば、SiCが圧倒的にリードしている。そしてまた、TSMCがGaN on シリコンを実現したことも話題になった。しかして、酸化ガリウムパワーデバイスは、既存のシリコン、さらにはSiC、GaNを置き換えていく可能性が十分にあるという。一部の見方では、2030年には確実にGaNを抜くだろう、とも言われている。

 「SiCに比べオン抵抗が86%も低減できるということは、同一面積で大電流が流れるわけであるから、パワーモジュールの小型化が圧倒的に進むことになる。今後、あらゆる領域においてチップサイズを小さくすることが肝要であり、また、SiCでは実現が難しい1万Vの高耐圧を持つデバイスの実現も可能である。さらに、車載向けに関してはスイッチング特性を含めて我々の新材料による酸化ガリウムデバイスはすべての条件をクリアできる。そしていよいよ、量産の時を迎えた。ちなみに特許は350件を出願済みであり、100件の権利化に成功している。一番強い基本特許を持っているわけだから、全世界と勝負できる陣容はいよいよ整った」(井川氏)

 京都大学と言えば、吉野彰先生がリチウムイオン電池をテーマにノーベル賞を受賞したことが記憶に新しい。そしてまた、新材料の酸化ガリウムのパワーデバイスで世界に勝負をかける気鋭のベンチャーが京都大学から出現したことには、いやはや驚かされるばかりだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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